04/政治の品格

2017.04.26

青木理★安倍三代

20170426

 

 「政治家には、すごく努力している人もいるし、天才的な人もいる。主人はそのどちらでもないのかな、とは思います。でも、選ばれて生まれてきたんだろうなとも思う。天のはかりで、使命を負っているというか、天命であるとしか言えないと思っていて」〔…〕

 基底にあるものが「天のはかり」や「天命」「使命」なるものだとするならば、夫の晋三は懸命にその役割を演じている面もあるのではないか――そう重ねて尋ねた時に返ってきた答えは、相当に真実を射抜いているのではないかと感じられた。昭恵の答えはこうだった。

 「主人は、政治家にならなければ、映画監督になりたかったという人なんです。映像の中の主人公をイメージして、自分だったらこうするっていうのを、いつも考えているんです。

だから私は、主人は安倍晋三という日本国の総理大臣を、ある意味では演じているところがあるのかなと思っています」

 だとするならば晋三はやはり、こうすれば祖父・岸信介や周辺の“狼”たちに喜ばれる、こうすれば与えられた「運命」を見事に演じきれる――そう考えている程度の核しか持たない空疎な中心なのではないか。

 ★安倍三代 |青木理 |朝日新聞出版|2017年1月|ISBN:9784023315433|○

 当方、嫌いな政治家を三人あげるとすれば、小泉純一郎、菅直人、安倍晋三である。共通するのは、言葉が軽い、しらじらしく嘘をつくことである。

  本書は、明治27年生れの祖父・寛、大正13年生まれの父・晋太郎、昭和29年生まれの晋三という「安倍三代」についてのルポルタージュ。祖父寛は、東条内閣退陣要求、戦争終結などを主張した「反骨と反戦の政治家」であった。父晋太郎は、竹下登、宮澤喜一とともにニューリーダーとして首相の座を争った「バランス感覚や優しさ」をもつ政治家だった。

  晋三は、まじめで要領がいい凡庸なマザコン青年だったが、リベラルな祖父・父とは正反対に、母方の祖父・岸信介の影響もあるだろうが、“子犬が狼の子と戯れているうち、まるで狼のようになってしまった政治家である。「狼」とはタカ派。安倍内閣は閣僚20人のうち自らを含め16人が「日本会議」に所属する。

 安倍首相の国会答弁の軽薄さを見ていると、なぜあんな人が首相にと思ってしまう。が、それは当方も経験済みの居酒屋での定番会話の“なぜあの人が部長に”と同じだから、言ってもしようがない。

 それにしても軽佻浮薄の似た者夫婦である。問題にしたいのは安倍“アキレ”夫人のことである。いわゆる森友問題は、瑞穂の國記念小學院新設のための国有地の格安払い下げ問題に端を発し、特異なキャラクターの籠池康博理事長、顧問弁護士であった稲田明美防衛大臣の虚偽答弁、安倍昭恵夫人の名誉校長就任、百万円寄付問題、松井大阪府知事のすり替え発言、財務省の安倍首相へ“忖度”、佐川宣寿理財局長の得意げな“隠蔽”答弁、総理大臣夫人付官邸職員の暴走、官邸の姑息な動き等々、めまぐるしく動いた。このまま終わらせてはならない。

 当方は、当初、塚本幼稚園の園児たちが、「日本国のために活躍されている安倍晋三内閣総理大臣を、一生懸命支えていらっしゃる昭恵夫人、本当にありがとうございます。安保法制国会通過よかったです」の唱和の映像に鳥肌が立つほど驚いた。昭恵夫人は「感動しちゃいました」と涙を流した場面である。

 それまで昭恵夫人は「家庭内野党」「リベラル」というメディアが勝手につくったイメージを信じ、当方はそれなりに好感を持っていた。だが次々出てくる不可思議な言動。そして政治的主張は、まぎれもなく夫・晋三のコピーだった。上掲の「主人は安倍晋三という日本国の総理大臣を、ある意味では演じている」というのは、「私も総理大臣夫人を演じている」との意味も含まれていると思われる。

 著者はそんな昭恵夫人を「失礼ながらスピリチュアルというかオカルトというか」と表現している。

 本書は安倍三代、寛、晋太郎、晋三の三人の人間像を追ったものだが、日本の政治が時代とともに歪んできた様があぶりだされて興味深かった。

 晋三の成践大の恩師・宇野重昭は言う。

 ――「目を覚まし、正しい意味での保守、健全な保守を発見してほしいと思っています。でなければ、(肯定的な意味で)歴史に名を残すのではなく、とんでもないことをやった総理として歴史にマイナスな名を残すことになる。名誉ある安倍家の名を汚すことになる。そう言いたいです」(本書)

 

青木理★青木理の抵抗の視線

青木理■誘蛾灯――鳥取連続不審死事件

 

 

 

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2016.11.29

若宮敬文■ドキュメント 北方領土問題の内幕

20161129

 

 こうしてついにクレムリンで調印式が行われた。〔…〕

 フルシチョフこそ不在だが、先方はルガーニンと外相のシピーロ、日本側は鳩山、河野、松本の三人がひな壇に並び、次々に歴史的文書に署名した。鳩山の感慨は想像に余りある。まさに政治生命をかけてきた国交正常化が実現したのだ。

 日ソ共同宣言(19561019日)

 戦争状態の終結 外交関係回復と大使の交換 国連憲章の尊重 日本の国連加盟支持 日本人の戦犯釈放と送還 日本への賠償請求の放棄 貿易、通商をめぐる条約の交渉開始 漁業条約の発効――が約束され、領土については以下のように規定された。〔…〕

 ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞諸島及び色丹島を日本に引き渡すことに同意する。

ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。

  このあとクレムリンの大広間で行われた祝賀会にも、鳩山は感激するばかりだった。〔…〕

「真白い大理石の壁の大広間に、各国の大公使をふくめて千五百人ばかりの人が集つた。そしてその真只中で楽隊が厳かに君が代を奏した」

 

 ■ドキュメント 北方領土問題の内幕――クレムリン・東京・ワシントン|若宮敬文|20168|ISBN: 9784480016409|◎おすすめ

  元朝日新聞主筆の若宮敬文は、20164月滞在先の北京のホテルで死去した。68歳。

  若宮敬文といえば、朝日のコラムに「竹島と独島 これを『友情島』に…の夢想」と題し、「例えば竹島を日韓の共同管理にできればいいが、韓国が応じるとは思えない。ならば、いっそのこと島を譲ってしまったら、と夢想する」と書いた人である。なんという甘ちゃんだろう、と当方は蔑視していた。

  1965年の日韓基本条約締結時に「竹島・独島問題は、解決せざるをもって、解決したとみなす。両国とも自国の領土であることを主張することを認め、同時にそれに反論することに異論はない」という当時の密約こそ、当方は継続すべきと考えている。この交渉で河野一郎が活躍した。(ロー・ダニエル『竹島密約』)

  さて、本書は、1956年のフルシチョフ共産党第1書記、ブルガーニン首相、鳩山一郎首相、河野一郎農相らによる「日ソ共同宣言」、とくに北方領土返還問題のプロセスを詳細に追ったノンフィクションである。著者の父は、この交渉に同行した鳩山首相首席秘書官若宮小太郎である。父の残した日記や手帳をはじめ、さまざまな文献を駆使して書き上げた。父への思いを込めた作品であり、結果として「遺作」にふさわしい。

  ことは19452月の米英ソによるヤルタ会談で、ソ連が参戦すれば南樺太と千島列島をソ連に与えるという秘密協定が結ばれたことに始まる。以後今に至るまで日ソ交渉の影の主役はアメリカであることがよく分かる。

  つぎにアメリカべったりの吉田茂と日ソ国交回復をライフワークとする鳩山一郎とのすさまじい権力闘争が描かれる。たとえば吉田が「鳩山首相ニ与ふるの書」を新聞に書き「無経験かつ病弱の首相、何の成算ありて自ら進んで訪ソ、赤禍招致の暴を試みんとするや」と罵倒する。また、ダレス国務長官、重光葵外相の“悪役”ぶりも見もの。

  鳩山一行というか日本政府は、クレムリンの座席を見て初めてブルガーニン首相よりもフルシチョフ第1書記が上位だったと気づく。なんともはや。

  臨場感あふれる交渉の場の再現。本書の事実上の主役は河野一郎。

 たとえばクレムリンでフルシチョフはペーパーナイフを凶器のように振り回して熱弁をふるうので、河野が「自分にくれないか」と取り上げるエピソード。また、フルシチョフが「これはミコヤン君の故郷でできたコニャックだ。飲まないと侮辱だ」と下戸の河野に強制し、「飲んだら僕のいうことを聞くか。聞くなら飲もう」と反撃する話など。

  さて、ゴルバチョフ、エリツィン、プーチンと時代は変わり、2016年はこの「日ソ共同宣言」から60年、一時は柔道家として「引き分け」論を展開したプーチン。安倍に勝算ありや。

 

佐藤優/鈴木宗男■ 北方領土「特命交渉」

 

東郷和彦■ 北方領土交渉秘録――失われた五度の機会

 

 

 

 

 

 



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2015.12.31

朴裕河★帝国の慰安婦

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幸いにも20138月に韓国で出版した『帝国の慰安婦-植民地支配と記憶の闘い』には、多くのメディアがまじめな関心を示してくれました。ほっとしましたが、その後韓国でわたしの問題提起が広く公論化されることはありませんでした。〔…〕

 

2014年〕6月中旬、元慰安婦の方たちの名誉を毀損したとして、韓国の支援団体から本の出版差し止めと損害賠償などを求めて、民事・刑事で提訴・告訴されるという事態が発生しました

 

原告は元慰安婦の方々の名前になっていますが、実質的には慰安婦たちの休息空間「ナヌムの家」の管理所長とその依頼を受けた「ナヌムの家」の顧問弁護士による提訴・告訴でした)

 

――日本語版のための序文

 

★帝国の慰安婦――植民地支配と記憶の闘い│朴裕河(パクユハ)│朝日新聞出版│ISBN9784022511737201411月│評価=◎おすすめ

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 ソウル東部地検は『帝国の慰安婦』の内容が、①元慰安婦の人格、名誉を著しく毀損し学問の自由を逸脱、②「元慰安婦には日本軍人と同志的関係にあった者もいた」という記述は虚偽、であると判断し、著者の朴裕河を名誉毀損罪で在宅起訴した。

これに対し、ソウル東部地裁は、「『朝鮮人慰安婦』の苦痛が日本人売春婦の苦痛と基本的には変わらない」「『慰安婦』たちを『誘拐』し、『強制連行』したのは、少なくとも朝鮮の地では、また公的には日本軍ではなかった」など34カ所の削除を求めるなど、名誉棄損を部分的に認め、仮処分判決を下した。

本書の著者は、1957年ソウル生まれ、韓国・世宗大学校教授。慶応や早稲田で日本文学を専攻。本書は学術書、歴史書ではなく、慰安婦問題を解決するために韓国、日本の両面から問題点を探ったもの。韓国語版と日本語版とは内容が若干異なるらしい。

 当方が注目したのは、「20万人の少女たちが日本軍に強制的に連行され、性奴隷にされた」という“集団記憶”をつくった韓国挺身隊問題対策協議会(以下、挺対協)のこと。

 本書を読了して間もなく、国交正常化50年の終わりが近づいた20151224日、「安倍首相は、岸田外相に韓国を年内に訪問し、尹炳世(ユンビョンセ)外相と協議を行うよう指示した」というニュースが流れ、あっという間もなく同28日、両国外相協議により“電撃的”に慰安婦問題は合意に達した。

 ――日韓外相会談後の共同記者発表によると、日本政府は同問題への旧日本軍の関与を認め、「責任を痛感」するとともに、安倍晋三首相が「心からおわびと反省の気持ち」を表明。元慰安婦支援のため、韓国政府が財団を設立し、日本政府の予算で10億円程度の資金を一括拠出する。合意に基づく解決策が「最終的かつ不可逆的」であることも確認した。(時事通信)

 ――岸田氏は共同記者発表で、慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。今後、国連など国際社会で、本問題について互いに非難、批判することを控える」と表明。尹氏も合意事項の履行を前提に、「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と述べた。

  また、ソウルの日本大使館前に設置された慰安婦問題を象徴する少女像について、尹氏は元慰安婦支援団体「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)」を念頭に、「関連団体との協議などを通じて適切に解決されるよう努力する」と語った。(同)

 さて、挺対協の“力”がもっとも注目されたのは、2011年。慰安婦問題の解決のために日本に働きかけないのは憲法違反との憲法裁判所の判決を受けて、李明博(イ・ミヨンバク)大統領みずからが野田佳彦首相に対して「人道的措置」を提案した。日本側も受け入れ、解決したかに見えた。が、挺対協は「法的賠償=国会議決による謝罪と陪償」を要求し、李明博政権を「骨の髄まで親日」と激しく非難した。韓国政府は結局、みずから解決を迫っておきながら「支援団体の意向」を気にして協定締結を直前になってキャンセルした。恐るべき挺対協のパワーである。日本では“韓国はゴールポストを動かす”という非難が始まった。

 しかし著者はいう。

 ――このようなことは、挺対協自体に力があるからというより、韓国国民とマスコミが挺対協の認識を共有し、支えているためである。

 2011年ソウルの日本大使館前に設置されたブロンズの少女像は、現在国内外に30体設置されている。今回の“電撃合意”に反対する挺対協は、今後さらに少女像を増やすと宣言した。

 本書は、挺対協によって「抑圧される民族の娘」として“集団記憶”された朝鮮人慰安婦問題を解きほぐしていく。

「この20年間、日本政府は謝罪し、朝鮮人慰安婦の半数近くが謝罪を受け入れた。しかしそのことは知らされないまま、謝罪しない者と許さない者の対立だけが、慰安婦問題の中心を占めてきた」

「このままだと慰安婦をめぐる争い――〈記憶の争い〉は終わらないだろう。日韓や左右の分裂と対立によって生まれる苦痛は、結局のところ、慰安婦たちが受け持つことになる。自発的であれ強制連行であれ、朝鮮の最も貧困で無力な娘として日本軍の欲求処理の手段にならざるを得なかった彼女らが〈死ぬまで〉苦痛を受けることになるのである」(本書)

 著者はいう。

 ――民族の違いや貧困という理由だけで他者を支配し、平和な日常を奪ってはならないという新たな価値観を、慰安婦問題の解決に盛り込みたい。

 以上、朴裕河『帝国の慰安婦――植民地支配と記憶の闘い』の一読を勧めるためのメモ書きである。

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2011.10.12

町田貢◎日韓インテリジェンス戦争

20111013

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中曽根首相は就任後初めての訪問国に米国ではなく、韓国を選んだ。この訪問理由について、中曽根氏は「日韓関係を解決して訪米することが、米国との同盟強化の方策と考えた」と語っている。〔…〕

首相はポケットから挨拶文を取り出し、ゆっくりと広げた。

「ヨロブン、アンニョン ハシムニカ (ご来賓の皆さん、今晩は)……」

会場は大きくどよめいたという。スピーチの中程で日本語になり、韓国語の通訳が入った。

そして最後。「オヌルン、テダニ カムサハムニダ (本日は誠にありがとうございました)」

会場は割れんばかりの拍手に包まれたという。〔…〕

大統領官邸での夕食会が終わった後、中曽根首相一行は、宿舎の新羅ホテルに帰った。この後、中曽根首相は極秘裏に再び、大統領官邸に招かれた。全斗換大統領は中曽根首相と二次会をやろうとしたのだ。公式訪問で、このように極秘に二次会をやるというのはあまり例がない。全大統領はよほど嬉しかったのだろう。〔…〕

韓国のことわざに「カヌンマリ コワヤ オヌンマルド コップタ」という言葉がある。

「出て行く言葉が美しければ、返ってくる言葉も美しい」という意味だ。韓国の人々は日本人以上に情にもろい国民だ。

◎日韓インテリジェンス戦争│町田貢│文藝春秋│ISBN9784163737003201102月│評価=○

<キャッチコピー>

軟禁中の金大中氏への秘密接触、KCIAの暗躍、北朝鮮と韓国の壮絶な戦い、金日成の死の真相…。秘話満載!スパイ小説よりリアルな外交官の日韓情報戦争。

<memo>

著者は朝鮮畑一筋の元外交官。大使館の情報活動(インテリジエンス)を担当。金大中大統領。「生涯を通じ、命を懸けて最も濃密な関係を持つことになった韓国人」との24年を記述する。その“泣き笑いを共にした政治家”を、しかし最後には韓国政治記者の「私は人間としての金大中氏をあまり評価しない」との言葉を引き、著者は賛意を示す。

木村幹◆韓国現代史――大統領たちの栄光と蹉跌

高月靖◆徹底比較日本vs.韓国

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2011.09.15

岡本隆司◎中国「反日」の源流

20110915

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現代のわれわれが最も気になるのは、中国の「反日」である。だから、中国はなぜ「反日」になったか、という問いも発せられる。しかしこれは、問い自体がおかしい。

「反日」を文字どおりに解するなら、中国は史上ずっと反日であって、何かのきっかけで、あらためて「なった」わけではないからである。

遅くとも明代、日本を「倭寇」とみなしてからは、そうである。親日的な時期はあっても、それはごく短い例外にすぎない。

現在に直接つながる「反日」は、厳密にいえば、さかのぼって日露戦争の終わり、20世紀の初めにはじまったものである。しかしそれも、日清戦争の主因をなした従前の反日を前提条件にしなくては、成立しなかった。

社会構造およびその差異が、経済制度・政治権力の性質とそのちがいとなってあらわれ、それがさらに、対外姿勢とその齟齬をつくりだす。

そのそれぞれが、相互の理解不足をもたらし、歪んだイメージや誤解、矛盾をうみだし、対立を重ねて破局にいたる。その破局の結果がまた、あらたな対立の出発になる。

近代の日中関係と反日の源流を形づくつた歴史経過も、ほぼ以上につきている。

◎中国「反日」の源流│岡本隆司│講談社│ISBN9784062584906201101月│評価=○

<キャッチコピー>

「反日嫌中」の本質とはなにか? 中世以降の日本と中国の政治体制、社会構造の分析から、「反日」の源流をあぶりだし、問題の本質を明らかにする。

<memo>

史学の祖・司馬遷は、儒教の真理は抽象的な理論で述べるよりも、具体的な歴史事実に即して語ったほうが、よくわかる、と称して『史記』を著した。つまり中国の史学とは、儒教の教義を事例叙述に翻案したもの、したがってそこで描かれる歴史事実とは、イデオロギーの表明なのである。〔…〕日中関係の政治問題が、歴史認識という形態をとるのは、たがいにとって、歴史が自らの正義を一方的に表明する手段であるからにはかならない。「正しい」歴史認識というスローガンがすべてを物語っている。そこでは、相手の事情はいわずもがな、史上の日中関係すら、実際にあった事実から乖離して語られてきた。(本書「エピローグ」)

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