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2004.09.28

ギムレットの作り方

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 『長いお別れ』はレイモンド・チャンドラーの最高傑作である。1954年、『かわいいい女』から5年後に書かれた。

 この本の読まれ方の一つは、マーロウが「どうしても嫌いになれない人間だった。こんなことが言える人間に一生のあいだに何人会えるであろうか」という、テリー・レノックスとの男同士の物語、である。
 もう一つは、和田誠の『お楽しみはこれからだ』で有名になった「ギムレットには早すぎる」という小説の中の名セリフとして、である。

 ギムレットって? 今回は人気カクテルの作り方を見よう。

 マーロウとテリーは、三月のある雨の日の夕方、“ヴィクター”のバーの隅にすわって、ギムレットを飲む。
「ギムレットの作り方を知らないんだね」
 と、彼は言った。
「ライムかレモンのジュースジンとまぜて、砂糖とビタを入れれば、ギムレットができると思っている。ほんとのギムレットはジンとローズのライム・ジュースを半分ずつ、ほかには何も入れないんだ。マルティニなんかとてもかなわない」
「ぼくは酒に関心を持ったことがない」
 といった会話をするわけですね。
 近年ではドライ・ジン・ベースでフレッシュ・ライムを使うなどして、辛口にアレンジする。

 その1。ドライ・ジン 45ml 。ライムジュース 15ml。ライムジュ-スは、フレッシュライムと、販売しているライムジュ-スを1対1の割合で使うとよりおいしくなる。
 その2。ドライジン 40 ml 。ライムジュース 20 ml。
 その3。紅乙女 3/4 。 ライムジュース1/4 。ガムシロップ 1/2tsp
 その4。上善如水 45~60ml 。ライムジュース 15~20ml 。ライム 適量。甘みが嫌いな方はフレッシュライムを絞ったジュースでお試しください。

 その5。ビーフィーター(BEEFEATER GIN) 3/4 。LIME(SUNTORY LIME)
ライム(サントリー ライム) 1/4。「ビーフィータージン」は、1820年以来、変わらぬレシピを守り続けているビーフィーター社の製品。
 その6。ドライ・ジン 3/4 。ライムジュース 1/4 。お好みでグラスのふちをライム(ジュース)でしめらせ、グラスの半分にだけ砂糖をつける(シュガー・リム)。必要ならライムをしぼり、氷を詰めたシェイカーによく冷やしたジンとライムジュースを入れ、シェイク。
ライムの切れっぱしを落とすこともあります。
 といった具合。論争の多いカクテルだそうだ。

「このカクテルが生まれたのは1890年のこと。当時のイギリス海軍では、将校にはジン、船員にはラムの水割りを毎日配給していた。海軍の軍医、ギムレット卿は、健康のためにジンをライムジュースで薄めて飲むように提唱。これがギムレットの始まりとなった。従って、ギムレットの発祥地はインド洋上の軍艦の上、と考えるのが妥当である。生のライムジュースを使うか、既製品のライムジュースを使うか、意見は分かれるが、当時のライムジュースは保存のために砂糖が加えられていたという」(Web Night Barサントリー)

 さて、フィリップ・マーロウもののなかから名フレーズをみつけるシリーズ。清水俊二の訳による。

 
 *
「奥さん。彼はラス・ヴェガス行きのバスに乗っています。友だちが仕事を世話してくれるんです」
 彼女は急に明るい声を出した。「ラス・ヴェガスですって? 昔を思い出したんだわ。私たちが結婚したところなんですのよ」
「忘れたんでしょう。覚えていたら、ほかへ行ったはずです」
 *
「ぼくは店を開けたばかりのバーが好きなんだ。店の中の空気がまだきれいで、冷たくて、何もかもぴかぴかに光っていて、バーテンが鏡に向かって、ネクタイがまがっていないか、髪が乱れていないかを確かめている。酒のびんがきれいにならび、グラスが美しく光って、客を待っているバーテンがその晩の最初の一杯振って、きらいなマットの上におき、折りたたんだ小さなナプキンをそえる。それをゆっくり味わう。静かなバーでの最初の静かな一杯――こんなすばらしいものはないぜ」
 *
「アルコールは恋愛のようなもんだね」と彼は言った。「最初のキスには魔力がある。二度目はずっとしたくなる。三度目はもう感激がない。それからは女の服を脱がせるだけだ」
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「ここでぼくが“いったい、どういうことなのだ”と言うと君が“われわれは質問してるのだ”と言うわけだね」
「で、おとなしく返事をするか」
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「結婚したときは37でした。女については大ていのことは知ってる年齢です。大ていのことと言ったのは、女について何もかも知りつくしている人間はいないからです」
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「妻はもう充分飲んでいます」と、彼はわれわれのどっちの顔も見ないで言った。「私は酒を飲みません。酒を飲む人間を見るたびに、飲まないでよかったと思っています」
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 部屋着の前がはだけて、その下は九月の月のように何もまとっていないはだかだった。
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「人生の悲劇は美しいものが若くして消え失せてしまうことではなく、年を重ねてみにくくなることです」
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 こんなとき、フランス語にはいい言葉がある。フランス人はどんなことにもうまい言葉を持っていて、その言葉はいつも正しかった。
 さよならを言うのはわずかなあいだ死ぬことだ。
 *
 彼は手を顔にあげて、サングラスをはずした。人間の眼の色はだれにも変えることはできない。「ギムレットにはまだ早すぎるね」と、彼は言った。


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