永遠に、幸せになりたかったら、釣りを覚えなさい。
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いつか雨の日に一九世紀末のイギリス人の釣師の書いたものを読んでいるうちに中国古諺を一つ教えられた。出典が書いてないので、どこから引用したものか、いまだにわからないでいる。
しかし、それは男による、男のための、男の諺なのである。いまこの人ごみのなかで、それがありありと昏迷のなかによみがえってくる。
一時間、幸せになりたかったら
酒を飲みなさい。
三日間、幸せになりたかったら
結婚しなさい。
八日間、幸せになりたかったら
豚を殺して食べなさい。
永遠に、幸せになりたかったら
釣りを覚えなさい。
――開高健 『オーパ!』
*読前: 炸裂する水面、跳躍する怪魚! 大河にひそむ名・怪・奇、さまざまの魚たち。アマゾンの豊饒、苛烈の中に“オーパ!”と叫ぶ冒険紀行。
**読後:★★★★ いつもワープロでうった文章を読んでいると、極太の万年筆で書かれ十分に推敲されたものを読みたくなる。開高健のゆたかな語彙の海は「こってり味」だが、ときどきむしょうに読みたくなる。
「ハイネは、遊んでいるときだけ男は彼自身になれると、いった。ニーチエは、男が熱中できるのは遊びと危機の二つだけだと、いった」
と開高健は書き、アラスカから南米最南端までの縦断など、世界中を釣りの旅。ただただひたすら女房から逃れるために……。
***開高健 写真・高橋曻 『オーパ!』集英社文庫・1981.3.25第1刷
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