魚は、時に水を嫌う、風を嫌う。
お気に入りフレーズ(42)
やはり釣は根が魚を獲るということにあるものですから、
余り釣れないと遊びの世界も狭くなります。(略)
ところが魚というのは、
それは魚だから居さえすれば餌があれば食いそうなものだけれども、
そうも行かないもので、
時によると何かを嫌って、
例えば水を嫌うとか風を嫌うとか、
あるいは何か不明な原因があってそれを嫌うというと、
居ても食わないことがあるもんです。
――幸田露伴 『幻談』
*読前:斎藤茂吉に「このくらい洗練された日本語はない」と絶賛された「幻談」の語りは、まさに円熟しきった名人の芸というに値する。
**読後:★★★★ 露伴といえば、幸田文の父として知っているだけで、作品を読んだことがなかった(今なら青木玉の祖父か)。で、とりあえず青空文庫からダウンロード。
昭和13(1938)年に書かれた「幻談」。講釈師の語り口のような文体。中味も、怪談ですね。それが露伴の作風だと知った。なんとも魅力的な語りの奇譚。釣りファンには釣りの薀蓄がいいのでしょうね。
ついでに、露伴俳句・釣り10選。
おぼろ夜やぽとんと淵に魚躍る
鯉釣や銀髯そよぐ春の風
水無月や與助は居ぬか泥鰌売
釣舟のみよしにさはる若葉哉
夕帰る魚籃おもたし蓼の雨
江の秋や釣の綸から暮れかゝる
釣の気も老いてすみけり秋の水
釣師撲つ露は銀河のしぶきかな
場末町章魚の脚打つ霰かな
貧樂や釣の書をみる年の暮
***幸田露伴 『幻談』青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/cards/000051/files/361.html
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