俳句は旅人の吐息に似ている。
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短詩型文学は、漂泊者にふさわしい。
世を捨てた人が、それでも身を捨てきれず溜め息のようにもれ落ちる最短の自己表現のことば。
感慨に立ち止まっても、しばしの後に足早に立ち去る現場には、短歌や俳句が似つかわしい。
なかでも俳句は最短詩型として、旅人の吐息に似ている。(略)
山頭火にも佳句はある。
影もめだか
だから何なんだ、という問いをぴしゃりと黙らせ、簡潔でゆるぎなく、そして軽みまでそなえている。
俳句の極限である。
――上野千鶴子「うたの極北――俳人尾崎放哉」
*読前:「社会学者」という言説生産者の存在理由は、どんなフィールドにも降りたち、使える道具ならどんな道具をも使ってブリコラージュ(器用仕事)をすること-。「女ことば」から「老人介護文学」まで、あまりに社会学的な文学論。
**読後:★★★ 上野千鶴子といえば、ずっと昔、「<私>探しゲーム」(1987)とか「スカートの下の劇場」(1989)を読んだ記憶があるが、さらにそれ以前、俳人であったことをこの著書で初めて知った。無季句2句をネットで見つけた。
日毎の包丁 夜毎の殺意
愛咬の前後溶けゆく時間の端
上野ちづこ―――『黄金郷(エル・ドラド)』1990年・深夜叢書社
***上野千鶴子『上野千鶴子が文学を社会学する』朝日新聞社・2000.12.1第1刷
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