こういう人が出世するように日本社会はできている、とはいえるだろう。
―― 斉藤美奈子 『男性誌探訪』
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それでは「文藝春秋」の特質をおさらいしてみよう。ご意見番然とした上からの視線と、下世話な興味の両方を柔軟に使い分ける老獪さ。世界的事件を前にしても「イスラム教とはだな」などとご高説を皆にふるまう大物ぶり。〔略〕
もしもこれが人間だったら、どうだろう。まあ、イヤなヤツですよね。っていうか、どんな組織にも一人や二人いるタイプである。年の頃なら四〇代~五〇代。若いときから妙に目配りと要領はよく、とりたてて個性的でも一芸に秀でているわけでもないのに、上には覚えめでたく下にはなれなれしく、自らのポジションをしっかり確保している人物……。
こういう人が出世するように日本社会はできている、とはいえるだろう。よって本誌(または本紙)と呼ばれるようなメディアもまた、同じスタンスを取ることになる。
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★★★
世の中を読む。余暇を愉しむ。センスを磨く。趣味に生きる。若さをことほぐ。……の5章にわけ、男性誌31誌を俎上にのせ、皮肉たっぷり辛らつに切る。
この著者は文芸評論家だそうだが、いわゆる文芸誌や小説誌ではあまり見かけない。理工系出身のOL、それもエディター(またはアンカー)ではなかったか、という雰囲気をもつ。掲出の部分などビジネス・ウーマンの経験無くして書けないだろう。
1冊または多数の本や雑誌を細かなパーツに分解し、それを分類し、再編成することに秀でる。それに独特の口調のコメントを添える。それを文芸評論家と呼ぶのがふさわしいといえばそうかもしれない。
■ 斉藤美奈子 『男性誌探訪』2003.12・朝日新聞社
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