男がかくあってほしいと願う女に自分を重ね合わせる変身能力、これこそが一般に「女の魅力」と呼ばれているものの根源です。
―― 鹿島 茂 『悪女入門――ファム・ファタル恋愛論』
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そうです、ほとんどの女性が誤解していますが、男をひきつける女の魅力とは、美貌でもスタイルでも、ましてや心や頭でもないのです。
男がかくあってほしいと願う女に自分を重ね合わせる変身能力、これこそが一般に「女の魅力」と呼ばれているものの根源です。この能力を欠いている女性は、たとえどんな美人にあっても決してモテません。〔略〕
イメージ動物たる男は、あるがままの女ではなく、自分の心の中に向かって欲情するものなのです。
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★★★★
ファム・ファタルとは、「恋心を感じた男を破滅させるために、運命が送りとどけてきたかのような魅力をもつ女」(ラルース大辞典)のこと。
著者は、大学で教えている「フランス文学史」「フランス文学演習」の講義ノートをファム・ファタルの誘惑術、つまり悪女入門という観点から書き直したのが本書だとあとがきにいう。
したがって、本書は「あなた」という女子大生にむけて、男を惑わす<危険な女>の秘術を語りかける趣向だ。そうか、いまどきの女子大生はこういう本を読んでいるのか。鹿島先生、絶好調である。かくて本屋に鹿島本が、巷に悪女があふれている。こういう記述もある。
――「貞淑そうな」女はモテますが、本当に貞淑な女のところには男は寄ってこないのです。必要なのはあくまで「貞淑らしいそぶり」なのです。
■ 鹿島 茂 『悪女入門――ファム・ファタル恋愛論』2003.6・講談社現代新書・4061496670
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