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2005.06.16

かうまで深く一葉に想はれてゐようとは夢にも考へてゐなかつた。

2005

―― 神崎 清 「結ばれざりし一葉の初恋」『樋口一葉研究』

    *
 (斉藤緑雨)が、一等驚いたのは、朝日新聞の軟派記者の半井桃水が、日記中の最も重要な人物になつてゐたことであつた。

 緑雨は、一葉の生前桃水との間柄をうたぐつて、いろいろ茶々を入れてみたことがあつたが、かうまで深く一葉に想はれてゐようとは夢にも考へてゐなかつた。〔略〕

 明治三十六年の秋、緑雨は、年少の友馬場孤蝶を千駄木の下宿に呼んで相談してゐる。そして一葉の日記をそのまゝでは発表しがたい理由を、いろいろ説明したが、その最も大きな難点は、
「一葉のやうなえらい女が桃水のやうな通俗作家に恋をしたりしてゐたことがわかつては、故人の価値を傷つけはしまいか」
 といふ心配であつた。 
 
    *
101-higuti

★★★★★
 「気になるフレーズ」2005年の記念すべき101回である。で、昭和17年発行の本書を持ち出した。。
つい先日、ヤフーのオークションで落札した。3,150円。「日本の古本屋」では4,000~7,000円、「楽天フリマ」では6,300~7,000円、「スーパー源氏」では5,000円だったので、まずまずの買い物だった。

 ところで、掲出の神崎清「結ばれざりし一葉の初恋」は、昭和14年の『婦人公論』に掲載されたもの。まあ、「小説・樋口一葉」といったたぐいのものだ。一葉の妹・邦子から日記を預かった緑雨が、それを公開しない理由を一葉の恋人が桃水だったからとしている。

 同じく本書に、「一葉女史の日記について」という一葉の死後11年目の明治40年の『文章世界』の記事もある。こちらは、一葉の日記が今も公にされていないのはなぜか、そして日記の中味について記述している。『噂の真相』のような記事である。いまもむかしも有名人のスキャンダルは楽しい。

■ 樋口一葉全集別巻・和田芳恵:編纂『樋口一葉研究』昭和17年4月・新世社

(これまでの一葉関連の本)

井上ひさし・樋口一葉に聞く

川口昌男・樋口一葉の手紙

三枝和子・ひとひらの舟

瀬戸内寂聴・炎凍る

田中優子・樋口一葉「いやだ!」と云ふ

田辺聖子・一葉の恋

高橋源一郎・官能小説家

鳥越碧・一葉

群ようこ・一葉の口紅 曙のリボン

森まゆみ・一葉の四季

領家高子・一葉舟

新・フェミニズムの会編・樋口一葉を読みなおす

 コラム:祝・一葉5千円札誕生

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