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2006.11.29

■ 愛妻日記|重松清

20061129aisaishigematu

厳密には「新築」と呼べるのかどうかわからない。建ってから二年近く買い手がつかなかったマンションの一室に、先週入居したばかりだった。

新築のときには手が出なかったはずの分譲価格は二割近くも値引きされ、しばらくモデルルームに使っていたからという理由で、合計百万円近い額の家電製品や家具まで付いていた。不動産屋に言わせれば、お買い得の稀少物件というやつだった。〔…〕

「いや……この部屋ね、さっきから、どこかで見たことあるなあって思ってたんですけど」

「どこか、って?」

「だから、あの、勘違いっていうか、やっぱり違うと思うんですよね」

「隠さなくていいから教えろよ。俺も気になるだろ、そんなこと言われたら」〔…〕

「勘違いだったら、ほんとにすみません」と念を押して、言った。

「アダルトビデオで見たんです」

「はあ?」

アダルトビデオに出てくる部屋が、ここにそっくりなんです。真っ白な壁で、家具も白で揃えてて……窓の位置とか、廊下のドアのデザインとか、ほんとに、そっくりなんですよね……」

――「ホワイトルーム」

■ 愛妻日記|重松清|講談社|200312月|ISBN4062121808

★★

《キャッチ・コピー》

R‐18指定の重松清。奥様には隠れて読んでほしいのです。夫のゆがんだ情欲を描く、初の性愛小説集。

memo

本書は「小説現代」に、直木三十六名義で掲載された作品を大幅に加筆し、改題したもの。

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