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2006.11.05

■ 一葉のきもの|近藤富枝/森まゆみ

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十九歳の一葉が、はじめて半井桃水に逢ったのは春雨の降る午後であった。その頃、彼女が住んでいた本郷菊坂町から芝佐久間町の桃水宅は遠く、途中人力車の助けを借りでも、二時間あまりはかかっただろう。おまけに小雨が降っていた。それからなぜか一葉が桃水宅に行く日は、それから後も必ずといっていいほど雨であった。〔…〕

一葉は書いていないが、相手の桃水はその回想記のなかで一葉の姿を、縞柄のきものも帯も色合いが地味で年寄じみた身なりであり、髪は銀杏返しでそれもあまり濃くない地毛だけで小さく根下りに結い、飾りもなくて淋しい姿だった、と書いている。おまけに三つ指ついて遊ばせ言葉、御使者にきた御殿女中のようだったと、少々意地の悪い観察を述べている。〔…〕

このとき一葉日記の桃水へよせた熱い思慕の文章を読んでいたら、あるいは違った書き方をしていたかもしれない。何しろ桃水が回想記を書いたのはこの春雨の日から十六年後のことで、一葉の日記はまだ公開されていなかったからである。

■ 一葉のきもの|近藤富枝/森まゆみ|河出書房新社|200509ISBN430972745X

★★★

《キャッチ・コピー》

貧しくてもおしゃれ心は捨てられない―。樋口一葉の作品と日記を“きもの”で読み解く、新しい試み。一葉がわかる、明治のきもの文化がわかる。

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