■ コリアン世界の旅|野村進
韓国人とベトナム人との反目は、元を辿ればすべてベトナム戦争時の両者の不幸な出会いに根ざしている。
戦争中の住民虐殺や、混血児を置き去りにした行為の延長線上に、ベトナム人の韓国人観はある。同様に、戦場で敵として見せつけられたベトナム人の権謀術策や、戦禍に翻弄されつづけてきたベトナム庶民の生きるがための「嘘」や「ずるがしこさ」の上に、韓国人のベトナム人観は立脚している。〔…〕
韓国人は、南北統一を成し遂げたベトナム人を羨望しつつ蔑み、ベトナム人のほうも、いまや〞先進国〞の仲間入りをしようかという韓国から来たリッチな韓国人たちを羨望しつつ嫌う。
こうした感情のもつれをそのままに、韓国人とベトナム人とは一気に経済のパートナーとして(おそらく今後はライバルとして)再び相まみえることになった。〝お手本″となったのは、明らかに日本の戦後の経済政策である。
朝鮮戦争とベトナム戦争の二大戦場を「市場」とみなした国はいくつもあるが、自国民の血を流さず法外な利潤を得たのは、唯一日本のみであった。
――「サイゴンに帰ってきた韓国兵たち」
■ コリアン世界の旅|野村進|講談社|1999年01月|文庫|ISBN:4062563193
★★★
《キャッチ・コピー》
「コリアン」とは、どんな人たちなのか?一見容貌が似かよっているがゆえに誤解を深めがちな日本人と在日韓国・朝鮮人のあいだの「透明な壁」を相手に、気鋭のノンフィクションライターが果敢に挑む!
私たちのすぐ隣にある「コリアン世界」を、世界的視野で掘り下げた意欲作。大宅壮一ノンフィクション賞・講談社ノンフィクション賞ダブル受賞作品。

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