■ 関西弁講義|山下好孝
関西弁の尊敬語を代表するこの「~はる」形式だが、京阪神「三都物語」の三つ目、神戸ではいささか様相が異なる。「ご存じですか」が、
京都では「知ったはりますか~」
大阪では「知ってはりますか~」
神戸では「知っとってですか~」〔…〕
「いらっしゃいますか~」は、
京都では「い(や)はりますか~」
大阪では「いてはりますか?」
神戸では「おってですか?」
となる。
これは神戸で「いる」ではなく「おる」が多用されることと関連がある。標準語の、
何、言ってるの?
は、京都、大阪では、
何、言うてんの?
そして、神戸では、
何、言うとお(言うとん)?
最後の「お」には、フランス語のような鼻母音化が観察される。
もし「いる」が使われていたなら、「てはる」形が用いられたのであろうが、神戸および兵庫県西部では「おる」が用いられるため、「てはる」形は存在しないのである。〔…〕
このような敬語体系の違いを見てみると、京都、大阪、神戸の関西三都も、京都・大阪対神戸という図式が生まれそうである。
――「関西弁の統語論」 ■ 関西弁講義|山下好孝|講談社|2004年02月||ISBN:4062582929 ★★★ 《キャッチ・コピー》 関西人は声が大きいのではない。声が高いのである。関西人は関西弁を変えようとしないのではない。変えられないのである―。 音韻、文法、語彙。標準語とは異なる独自の体系を持つ関西弁。北大の人気教師がユーモアを交えて綴る、関西弁の教科書。

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