■ 決定版「編集者」の仕事|安原顕
一般的に企画とは読者の要求や世のトレンド(流行)が重要要素のように思われ、また雑誌によってはそのことにのみ力点を置くものもあるようだが、少なくともぼくは、そのような雑誌作りのために「編集者」をしているのではなく、そうした乗りの雑誌に配属されたこともない。
いやむしろ、そのような仕事を強要されたら、ぼくはその社を辞めていただろう。偶然入った業界とはいえ、なぜ二十五年もいるかと言えば、その折々に、ぼく自身が興味や関心のあるテーマを、日頃、愛読している著者に直接、原稿依頼をし、一番最初に彼(または彼女)の原稿を読めるからだ。
極端に言えばこの仕事、昔の王侯貴族のように、自分のために作家や学者を抱えているようなところがある。こんな至福があるだろうか。
むろんそのためには、常に「編集者」として自分のテーマ(関心事)を持っていることが必須であり、また、そうは言っても同人誌ではないのだから、当然、他者(読者)は強烈に意識はするが、編集者の基本姿勢は読者におもねることではない。そして編集者自身が「読みたい」企画は、必ずや読者の心に届く筈だと、未だにぼくは信じている。
――「第三章 『編集者』の仕事」
■ 決定版「編集者」の仕事|安原顕|マガジンハウス|1999年03月|ISBN:9784838710737
★★★
《キャッチ・コピー》
編集者とは何か。どういう仕事をするのか。32年間の編集者生活を振り返り、その仕事を懇切丁寧に解説。さらに、文壇・出版界のマル秘な内幕も大暴露。天才ヤスケンの痛快編集者術。白地社91年刊の徹底改稿、決定版。
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