■ 新聞の時代錯誤――朽ちる第四権力|大塚将司
2005年10月24日のことである。
ある週刊誌の編集長に日本経済新聞社の杉田亮毅社長から突然、電話があった。
「是非とも明日(25日)、お目にかかりたい」〔…〕
26日夜、会食の席に行くと、杉田社長が深刻な面持ちで待っていた。
「つかぬ事を聞いて申し訳ありありませんが、例の村上世彰氏の〝村上ファンド″のことなんですが、うちの株を買うのではないか、という情報がありまして……。何か、聞いておられないでしょうか。」
「何も聞いていませんね」
「そうですか。何もね」
杉田社長はほっとしたような様子で、少し間をおいて続けた。
「ないならいいのですが、もし、そういう情報を入手されていたら、これは本当にお願いなんです。記事にしないで頂けないかと……。そう思いまして、お願いにあがったんです。これは他の週刊誌の編集長さんにもお願いするつもりなんですけど……」〔…〕
こんなやり取りの後、四方山話になったが、杉田社長は「〝村上ファンド″が買いに動いて裁判になればうちが負けてしまうと顧問弁護士に言われた」とか「株価が8000円くらいになってしまう」とか泣き言を残して帰っていったという。
――9章 社内株式保有制度という時代錯誤
■ 新聞の時代錯誤――朽ちる第四権力|大塚将司|東洋経済新報社|2007年 03月|ISBN9784492222775
★★★
《キャッチ・コピー》
「言論の自由」の名の下にいかに事実が隠蔽され歪められてきたか。インサイダー取引、ねつ造記事等不祥事の続く「聖域」はいかに形成され、そして今、いかに崩れつつあるのか。大新聞の病巣を抉る。
| |
| |
|
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント