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2007.03.26

■ 隅っこの「昭和」――モノが語るあの頃|出久根達郎

20070326sumikkodekune

紐でくくった手紙の束が出てきた。私宛のものではない。昔、お世話になったかた(故人)に出した、私の手紙である。

どうして自分の手紙が、あるのか?

謎はすぐに解けた。束の中に、恩人の奥様からの手紙が入っていた。

故人の遺品を整理なさっているうちに、私の手紙を見つけ、返して下さったのである。〔…〕

私は若き日の自分の手紙を前にして、考え込んでしまった。

私どもにも、子がいない。私たちが亡くなれば、この手紙もゴミにされるに決っている。私と恩人との交流を知る者もいなくなる。

人生とは、そんなものであり、何事も一代限りであろう。残す必要はないのである。

老いの仕度とは、思い出の一つ一つを片づけていくことなのだ。

未練を残さぬ、というのは、そういうことなのであろう。老いるとは死と隣り合わせになることである。従って老いの仕度は、死の準備にほかならない。

どんな人も死は身ひとつで迎える。

――「手紙」

■ 隅っこの「昭和」――モノが語るあの頃|出久根達郎|角川学芸出版/角川書店|2006 06月|ISBN9784046210807

★★★

《キャッチ・コピー》

モノの欠乏から戦後は始まり、モノが過剰に出回って昭和が終る。ちゃぶ台、手拭い、蚊帳、肥後守…。モノを通して、昭和の時代と暮らし、人情に触れる、モノ語りエッセイ。

出久根達郎■あらいざらい本の話

出久根達郎■嘘も隠しも

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