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2007.03.04

■ 〈狐〉が選んだ入門書|山村修

20070304nyuumonayamura

1981年の正月、夕刊紙「日刊ゲンダイ」の編集部にいる私の友人が遊びにきて、書評を書けとそそのかしました。書評する本も自分でえらんでかまわないといいます。分量は八百字ほどですが、週に一度の連載です。

私はとんでもないといいました。そのころの私は、まだ、サラリーマンにそんな時間があるわけがないと信じていました。書評を書くには、まず本を読む時間が要る。執筆のめに調べものをする時間も要る。そして執筆時間が要る。毎日、帰宅してから、それだけの時間がつくれるはずがない。はじめは断りました。〔…〕

いや、なによりも、時間とはつくりだせるものだ、ということを知りました。必須なのは、本に対する関心です。読みたい、知りたいというわくわくするような欲求です。それらさえあれば、たとえかつかつでも、なんとか時間をつかみだすことができる。

サラリーマンだからよかったのです。サラリーマンとしての仕事と、本を読んで書評を書く仕事とは、それぞれ画然と異なる別世界に属することです。

だから毎夜、帰宅すれば自室のなかにべつの時間がひらく。たとえば物理的な一時間が、関心と欲求とを動力にすれば、じっさいに倍にもつかえる。その動力をフル回転させれば、三倍にもつかえる。サラリーマンとしての時間から、あたうかぎり遠い、ふしぎに自由でうれしい時間です。

――「私と〈狐〉と読書生活と――あとがきにかえて」

■ 〈狐〉が選んだ入門書|山村修|筑摩書房|2006 07月|新書|ISBN9784480063045

★★★

《キャッチ・コピー》

ある分野を学ぶための補助としてあるのではなく、その本そのものに、すでに一つの文章世界が自律的に開かれている。私が究極の読みものというとき、それはそのような本を指しています。そして、そのようにいえる本が、さがしてみれば、じつは入門書のなかに存外に多いのです。

memo

〈狐〉と末尾に記した「日刊ゲンダイ」での毎週の連載は、20037月末まで、じつに22年半続くことになる。

山村修■ 書評家〈狐〉の読書遺産

山村修■ 気晴らしの発見

山村修■ 禁煙の愉しみ

狐■ 狐の書評

狐■ 野蛮な図書目録――匿名書評の秘かな愉しみ

狐■ 狐の読書快然

山村修■〈狐〉が選んだ入門書

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