■ そうだったのか!現代史|池上彰
ロシア革命でソ連が誕生したとき、ロシア帝国の人口は一億人を超えていましたが、民族としてのロシア人は、その半分もいませんでした。多民族の集合体だったのです。
スターリンは、さまざまな民族が故郷に固まって住んでいると、民族としての団結が強まり、やがてソ連からの独立運動を始めるのではないかと心配しました。ここにもスターリンの疑り深い性格が出てきたのです。
このため、各地の少数民族を集団で移転させる政策がとられました。民族ごと何の関係もない遠方に送り込んでしまうのです。
たとえばチェチェンです。いまだにロシア軍との激しい戦闘やゲリラ活動が続いているチェチェンでは、スターリン時代、住民が中央アジアやシベリアに集団移転させられました。
スターリン死後、チェチェン人は故郷に帰ることが許されましたが、ロシアに対する恨み、不信感は強まりました。〔…〕
スターリンは、集団移転ばかりでなく、「分断」の方法も採用しました。中央アジアのイスラム教の民族が団結してソ連に歯向かぅことを恐れ、5つの共和国に無理やり分割してしまいました。この5つの共和国は、現在カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンという独立国になっています。
99年8月、キルギスで経済援助のために出張していた日本人4人が、ゲリラの人質になる事件が起きました。これは、スターリンによって無理に分割された中央アジアに、イスラム教徒の統一された国家を建設しようという武装ゲリラ組織による犯行でした。スターリンの政策が、いまだに尾を引いているのです。
■ そうだったのか!現代史|池上彰|集英社|2007年 03月|文庫|ISBN:9784087461411
★★★★
《キャッチ・コピー》
全日本人必読! 世界がわかるための基礎知識。
民族紛争、テロ、領土問題など、激動する世界を理解するためには、少し前の時代を正確に知ることが必要だ。現在の動向に合わせ、単行本版に加筆。豊富なビジュアルとやさしい解説で現代史がわかる!
《memo》
知っているつもり、今さら訊けないイスラエル、ベトナム戦争、ベルリンの壁、天安門広場……。
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