■ 衣食足りて|山口瞳
気質的なものをすっかり吐きだしてしまった私には、いま何も書くことがない。
だから抱負といったものはない。
だからもう書かないほうがよいという考えが私のなかにあるが、そぅいう状態でこの一週間にぶつかった事件のひとつを、コントふうに評論ふうに私小説ふうに書き綴ってみようという冒険心が一方にある。
創作ノートをお目にかけるようでまことに心ぐるしいのだが、 君よ、これは一種の男の涙だと思ってくれたまえ。
――「男性自身」作者のことば
■ 衣食足りて|山口瞳|河出書房新社|2006年 02月|ISBN:9784309017525
★★
《キャッチ・コピー》
衣・食・住、そして礼儀作法に関する単行本未収録の文章を収めたエッセイ集。
《memo》
山口瞳の単行本未収録作品集が河出書房新社から続々出ている。これもその1冊。上掲は、週刊新潮に「男性自身」連載に当たっての挨拶文。当初はエッセイというより掌編小説としてスタート。単行本は「男性自身」(1965)から「江分利満氏の優雅なサヨナラ」(2004)まで全27冊。さらに河出書房新社から単行本未収録の「これで最後の巻」「最後から二冊目の巻」。未収録ということはすなわち“訳あり”であって、資料的価値しかない。
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