絲山秋子■ 絲的メイソウ
一体ひとりごとというのはどんなふうに分類できるのだろうか。もっといろいろありそうだが、思いつくままあげてみる。
A<散らかし系> 私である。特に大好きな阪神タイガースが逆転された時、呪いの言葉を吐き散らす。こちらが逆転すれば、手の平返して褒め散らかす。
B<説教系> 同じく阪神ファンである私の母はラジオに向かって、「だから言ったじゃない」とか、「言った通りにしないからそうなるのよ」などと語りかけている。野球も子育ても一緒なのである。
C<宣言系> 誰も聞いてないのに「さあ寝るぞ」とか「よし風呂だ」とかいちいち自分のやることを宣言しないと体の動かない人がいる。身近なところでは私の父がそれに当たり、風呂上がりに水一杯飲むのでさえ、「年寄りの冷や水」などと間違ったことを言う。
D<諦念系> したたか酔った帰り道、「所詮こんなもんだよな」とか、「まあ最初からわかってたんだけどさ」とか言ってしまう。飲み会の楽しさとは無関係に諦念に浸る。酔ったテンションを下げる効果がある。〔…〕
F<擬音系> いちいち擬音をつける奴がいる。「どーん」とか「シュシュシユシュ」とか。マッキントッシュのパソコンの電源を入れるとき私もたまに「じゃーん」と言ってしまう。〔…〕
――「寝言は寝て言え」
■ 絲的メイソウ|絲山秋子|講談社|2006年 07月|ISBN:9784062134217
★★
《キャッチ・コピー》
迷走、遁走、逆走、疾走、そして、メイソウ―あっちにぶつかり、こっちにぶつかり、決してまっすぐには進まない、絲山秋子の偽らざる日々。珠玉?の初エッセイ集。
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《memo》
わがひとりごと、最多3。「なんだかなぁ」「なに言ってんだか」「くそじじいい、しょうがねえなぁ」
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