和田誠■ 装丁物語
バーコードは確かに便利です。でも便利だということが、本の歴史や文化を傷つけてることを忘れちゃいけないと思う。〔…〕
これが小説だとしましょうか。小説家が書いた作品が出版される条件として、最後のページに、誰かが勝手に決めたとんでもない文字を必ず刷らなきゃならなくなったとしたら、文芸家協会はどうするだろう。
音楽家がCDを作る。演奏がそろそろ終わるという時に必ずピピーという機械音が入る。その昔は大もとの機械がキャッチして、それで流通はうまくいくし、著作権料もちゃんと徴収できて便利だと説明されたとしても、音楽家たちは納得するだろうか。
小説じゃないよ、音楽じゃないよ、装丁だよ、と言う人もいるでしょう。でも装丁家が装丁をすることは、作家が小説を書くこと、音楽家が作曲することと同じなんです。小説の包み紙じゃなくて、その小説と拮抗する仕事をしようという意気込みで取り組むんです。
――バーコードについて
■ 装丁物語|和田誠|白水社|2006年 12月|新書|ISBN:9784560720899
★★
《キャッチ・コピー》
装丁の第一人者が、書物に新しい生命を吹き込むための発想のコツとノウハウを、作家たちとの交流を中心にさまざまな側面から語る、もうひとつの本の物語。本好きな人、必読の一冊。
《memo》
1997年発行の新書化。
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