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2007.05.21

川本三郎■ 言葉のなかに風景が立ち上がる

20070521kawamotokotobanonakani

人の姿は少なくひっそりとしてはいるが、決して人間の世界から隔絶されているわけではない。どこかで他の人間とつながっている。同時に、そこは、現実社会とは違うもうひとつの世界、大仰にいえば、神のいる世界をかろうじて感じさせる。こちらと向うの境界線上の風景である。

人間の住まう現実を近景、神のいる場所を遠景とすれば、そこは中景といえるだろうか。現実の暮しをしている人間、日常の営みを大事にしている人間が、一日のなかで、ふと空を見上げる時に感じるような透き通った気持が中景という境界線上の風景を引き寄せる。

いわば、日常生活のなかから一瞬、こぼれ落ちた時に、目の前に現われる風景。そこにこそ惹きつけられる。

文学作品で好きなのも、作品のどこかでこの境界線上の風景が描かれているものだ。人間ばかり、現実ばかりの作品は息が詰まる。といって、はじめから遠い宇宙の果てや空想の異界を舞台にした極彩色のファンタジーにも心が動かない。

現実と非現実、こちらと向う、人間の手が加えられた風景と加えられていない風景のあいだの中間の風景。いわばリアリズムとファンタジーのあいだの作品が好きなのだ。

――「風景の発見と創造」

■ 言葉のなかに風景が立ち上がる川本三郎|新潮社200612月|ISBN9784103776031

★★★

《キャッチ・コピー》

ふと目を奪われ、吸い込まれる「風景」。そのなかに本当の「私」が存在する。堀江敏幸、丸山健二、水村美苗ら現代作家の描く「風景」から読み解く、私たちの生きる場所と心象。

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