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2007.05.11

ダニエル・ウォレス/小梨直■ ビッグフィッシュ――父と息子のものがたり

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父さんはいった。運んでくれ。おまえにはいくら感謝してもし足りないくらいだ。母さんに会ったら、伝えてほしい、わたしがさよならをいっていた、と。〔…〕

父さんがいった。向こうを向いていてくれないか。つづけてひとこと、頼む。と、いきなり腕のなかに生命がみなぎり、飛び跳ね、弾けんばかりのそれを、ぼくは抱えていることができなくなった、抱えたくて丸抱えていたかったのだけれども。そして気づくと腕のなかには毛布だけ、父さんはすでに川に飛びこんでいた。

死にかけていたわけではないことを知ったのは、そのときだった。父さんは変わろうとしていた。自分の生命を継いで生きつづける別の新しい別のなにかに、ただ変わろうとしていた。

これまでずっと父さんは魚になろうとしていたのだ。

すばやく泳ぎまわるその姿が見えた。銀色に輝く生命は、やがて黒々とした大魚の深みへと消え、以来ぼくは、一度もその姿を眼にしていない。

■ ビッグフィッシュ――父と息子のものがたり|ダニエル・ウォレス/小梨直-訳|河出書房新社|200002月|ISBN9784309203355

★★★

《キャッチ・コピー》

病気が進行して、やがて父はただの人となった。仕事のない、話すべきこともない、ただの人となった父について、なにひとつ知らないことにぼくが気づいたのは、そのときだった。…ゆたかなアラバマの自然を背景に、父と息子の絆を描いた感動のものがたり。

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