小林亜星・久世光彦ほか■ 久世塾
向田邦子さんはいつもこういう音楽を使ってくれとおっしゃって、例えば『あ・うん』(NHK、80年)というドラマでは、イタリアの17世紀の歌劇「アルチーナ」の「プレリュード」という音楽を上手に使ってなかなか説得力があった。
あの方は『阿修羅のごとく』(NHK、79~80年)でも、トルコの軍楽隊の音楽みたいなものを持ち込んできて「これを使ってドラマのテーマにしたい」とおっしゃって、それが非常に効果があってすばらしかったと思います。
また、『寺内貫太郎一家』(TBS、74年)の中でも、チャイコフスキーの「舟歌」というピアノ独奏曲をあるシーンで上手に使った。あれも向田さんが指定しました。
そういう劇作家の人はあまりいらっしゃらないのです。非常に音楽にも詳しいし、自分の好みがあるし、それに対する思い入れもある方で、そういうケースというのは多くはないです。向田先生は稀有な人でした。
あまり人の目に触れないような、しかし、魂をゆすぶるような音楽を彼女はいつも自分の気持ちの中に持ち続けて、そういうものから発想してドラマの魂をつくりだしていたよぅな気がします。
――小林亜星 「人を『感心』ではなく『感動』させることです。」
■ 久世塾|久世光彦・小林亜星ほか|平凡社|2007年02月|ISBN:9784582833485
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《キャッチ・コピー》
「21世紀の向田邦子を作ろう」というキャッチフレーズのもと開講されたシナリオライター養成講座『久世塾』。一流講師陣による特別講義録。
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