竹本浩三■ よしもと笑いのDNA-大阪・ミナミ・千日前…上方演芸裏ばな史
遡って昭和60年、阪神タイガースが21年ぶりに優勝した。戎橋界隈は大変な騒ぎになり、道頓堀に飛び込む人が続出。すぐそばのケンタッキー・フライドチキンのカーネル・サンダースおじさんが酔客に道頓堀川へ投げ込まれた。「次はくいだおれの人形や!」――。
これをラジオで聞いた専務(現会長)の柿木道子(二女)は、そうはさせじと急ぎ店に駆け込んだ。折しも、店員たちは「投げ込まれる前に海水パンツはかそ」「いや、浮き輪を抱かせい」と善後策の鳩首会談。
道子ハン、たった一言。
「そんな面倒なことせんかて、『ワテ、泳げまへんねん』と書いて首にぶら下げたらよろしねんがな」
その看板見た酔客は「何や、こいつ、泳がれへんねんて。情けない奴っちゃ」と納得顔で囲んだ輪を解いた。
長男の山田昌平社長。
「妹の道子には負けました。この店、あいつに任しまっさ」
――「くいだおれ太郎」
■ よしもと笑いのDNA-大阪・ミナミ・千日前…上方演芸裏ばな史|竹本浩三|神戸新聞総合出版センター|2006年05月|ISBN:9784343003591
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《キャッチ・コピー》
笑うてもろて95年! 「吉本の語りべ」と言われる著者が、吉本興業のお笑いの歴史と、笑いの王国に名を残す名物タレントや芸人気質の移り変わりを綴る。「デイリースポーツ」連載。
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