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2007.06.16

杉本秀太郎■ 花ごよみ

20070616sugimotohanagoyomi

ホームソングでおなじみの「宵待草」。竹久夢二の詩、多(おおの)忠亮の作曲。

待てど 暮らせど 来ぬひとを

宵待草の やるせなさ

今宵は月も 出ぬさうな

宵待草というのは、待宵草を転倒させて夢二が勝手に作り出した名である。宵になるのを待って花が開くのは待宵草、宵になっても来ぬ人を待っているのは宵待草。夢二は、宵待草がじつは待宵草と同じ花を指しているということにしたかった。

今宵は月も出ない暗夜だそうだから、月見草とも呼ばれるこの花が咲かなくても仕方がないでしょう、という理屈になっている。つまり、竹久夢二は自分の都合で発明した宵待草という名に対して、なかなか神経質にこだわっている。

「宵待草」は、大正末から昭和にかけて愛唱された。夢二の歌詞は一番しかなかったが、レコード会社がつづきの歌詞を西条八十に依頼したという。そして西条が付け足した歌詞には「宵待草の花が散る」とあったという。月見草の花は、朝日を受けるとしぼんでしまう。散りはしない。人々の失笑を買った二番の歌詞は、幸いにして歌う人もなく、忘れ去られた。

植物学を持ち出して正確を期すならば、同じアカバナ科に属しているが、月見草は月見草、待宵草は待宵草で、別の草花。そして俗にツキミソウと呼ばれているのは、本当はオオマツヨイグサだという。

――「月見草 オオマツヨイグサ」

■ 花ごよみ|杉本秀太郎|講談社|1994 09月|文庫|ISBN9784061591417

★★★

《キャッチ・コピー》

言葉の綾というものが美しくまとい付いている花…。美しい日本の四季を彩る花づくし百三十二章。古今東西の花にまつわる詩歌について蘊畜をかたむけた好著。

memo

 夢二と月見草の句といえば……。

月見草夢二生家と知られけり  文挾夫佐恵

秋闌けし夢二館の月見草    加藤 耕子

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