本田善彦■ 日・中・台 視えざる絆-中国首脳通訳のみた外交秘録
蒋経国総統と会見した際、コチコチに緊張していた人が、李登輝総統と会見するときは見違えるほど胸襟を開いたというか、むしろ馴れ馴れしい態度だったのを目のあたりにしたことがあります。そのときは、あえて“李総統のお人柄のなせるわざなのだろう”と好意に解釈しょうと心がけたものです」
そして短く沈黙した後、言葉を選びながらこう続けた。
「極論かもしれませんが、今の日本の人、それも台湾に関心を持つ人ほど、李登輝さん以外の台湾人にあまり興味を持たなくなったように感じられます。〔…〕
しかし台湾は日本の方が想像される以上に複雑な社会ですし、変化も速く激しい。誰か一人が台湾のすべてを代表するなんてありえません。日本では今日でも李登輝さんを神様みたいに持ち上げている人たちがいますが、あまりに度が過ぎるのもいかがなものでしょうか」〔…〕
林はかねてから、林ら日本語教育を受けた世代が第一線に立ち、ともすれば日本に好意的な立場でものを言い続けたことが結果として日本側を甘やかしてしまい、日本側が実際に台湾の様々な声を聞く機会をなくすという悪い結果を生んだのではないかと反省していた、という。
―――「第2章 日華国交断絶を見届けた台湾人外交官」
■ 日・中・台 視えざる絆-中国首脳通訳のみた外交秘録|本田善彦|日本経済新聞社|2006年09月|ISBN:9784532165673
★★★
《キャッチ・コピー》
ヴェールを脱いだ「歴史の裏方」たち。台湾出身、神戸育ちで周恩来の日本語通訳・林麗韞、蒋介石の通訳も務めた台湾人外交官・林金茎らの貴重な証言から、日中台トライアングルの水面下での複雑な人間模様を明らかにする渾身のノンフィクション!
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