裴淵弘■ 中朝国境をゆく――全長1300キロの魔境
日本に対する民族的悪感情が解消されていない現状では、自衛隊が北朝鮮地域で多国籍軍として展開するのは困難になることが予想され、同地域の統制は、韓国と、その最大の交易国である中国が中心になって実施される公算が高くなるようだ。
さらに、再統一を急ぐ韓国が、在韓米軍の存在が障害になると考えるようになれば、朝鮮半島の外交的主導権は中国に大きく傾くことになる。現に盧武鉉政権はその方向にあり、米軍が軍政に参加する作戦計画5029に反対したものと考えられる。
再統一が民族の宿願であり、それが中国の協力なくしては達成しえないのであれば、米国がこの流れを変えることはできない。中国と朝鮮半島は、今も昔も2200キロの国境でつながる唇歯相依る関係だ。太平洋を隔てた米国の影響力にも限界がある。
――第4章 国境崩壊のシナリオ――“統一後”の力学
■ 中朝国境をゆく――全長1300キロの魔境|裴淵弘(ベヨンホン)|中央公論新社|2007年 05月|新書|ISBN:9784121502452
★★★
《キャッチ・コピー》
脱北者に中韓両国はきわめて冷淡で、強制送還や人身売買の犠牲者になる者も多い。国境地帯では今、何が起きているのか。10年ぶりに厳寒の地に足を踏み入れた著者が、そこに生きる人々の姿を描き出し「魔境」の全貌を明らかにする。
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