沢木耕太郎■ 246
仕事場で、5月に出版予定の 『深夜特急』の手直しをする。
午後3時。三軒茶屋駅前の喫茶店「キャニップ」で「中央公論」編集部の河野通和氏と会う。間もなく書く予定の、「炎上」というタイトルの100枚ほどの作品についての打ち合わせをする。彼とは数年来の付き合いなのに、なかなか仕事が現実化しない。もしかしたら、これでようやく実が結ぶかもしれない、と少し気持が楽になる。
しかし、ノンフィクションの場合には、すべてが予定通りにいくとは限らない。何が起こるかわからないのだ。こちらの意志とは無関係に、不可抗力に近いなにかによって書けなくなることがある。
それは、状況の変化によるメディア側の事情であったり、取材対象の側の事情であったりさまざまだが、最終的には私自身が、この作品はまだ書かれることを望んでいない、と思うようになってしまうことがあるのだ。もちろん、だからこそノンフィクションを書くという仕事は面白いのだが。
仕事場に戻って、『深夜特急』の手直しを続行する。
――「1月10日 金曜日」
■ 246|沢木耕太郎|スイッチ・パブリッシング|2007年 04月|ISBN:9784884182786
★★
《キャッチ・コピー》
本を読み、映画を見て、酒を呑み、旅をする。執筆のあいま一息つくのは、幼い娘とのかたらいのひとときだった…。30代最後の一年の「疾走」を描く日記風エッセイが、ついに単行本化。
《memo》
246=国道246号線のこと、
1947年生れの著者が1986~1987年に雑誌に連載したエッセイ。なぜ今頃に書籍化?
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