« 山本信太郎■ 東京アンダーナイト――“夜の昭和史”ニューラテンクォーター・ストーリー | トップページ | 五木寛之■ わが人生の歌がたり――昭和の哀歓 »

2007.07.10

白川静■ 回思九十年

20070710shirakawakaishi

私が何のために中国の古典をよみ、『万葉』をよみ、文字を論じ、漢字制限を批判し、文字文化の回復を論じてきたのか、人々は概ね私の保守性によるものとされていたようである。

私の考えかたが漸く一部の人に理解され、注目されるようになったのは、字源字書である『字統』を書いてからのことであろう。私はその序文に、私の志のあるところを簡明に記しておいた。〔…〕

私のこの履歴書は、その意味では、時代に逆行した、一読書人の手記ということになろう。

もし私の仕事に、何らかの時代的な意味が与えられるとするならば、それは時代に逆行した、反時代的な性格のゆえに、かえってその時代のもつ倒錯の姿を、反映させたという点にあるのかも知れない。

大正期の暗く貧しい時代に生長した私の記憶からいえば、今のあまりにも放漫な、節度を失った社会は、いくらか異質なものにみえる。最も規律の厳正なところであるはずの自衛隊や警察の内部に、腐敗のかげが浸潤し、企業は利益のために手段を顧ることがない。

東洋を回復する前に、まずわが国を回復しなければならない。東洋的な理念のあり方からいえば、貧しいこともまた一つの美徳であった。

――「私の履歴書」

■ 回思九十年|白川静|平凡社|2000 04月|ISBN9784582824346

★★★

《キャッチ・コピー》

『字統』『字訓』『字通』の著者が自らの学問人生を綴った「私の履歴書」と、時空を逍遙遊する11の対話。

|

« 山本信太郎■ 東京アンダーナイト――“夜の昭和史”ニューラテンクォーター・ストーリー | トップページ | 五木寛之■ わが人生の歌がたり――昭和の哀歓 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 山本信太郎■ 東京アンダーナイト――“夜の昭和史”ニューラテンクォーター・ストーリー | トップページ | 五木寛之■ わが人生の歌がたり――昭和の哀歓 »