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2007.07.26

吉田修一・文/佐内正史・写真■ うりずん

20070727urizunyoshida

32歳の夏に、結婚したいと思う人ができた。〔…〕

結婚したいと思った彼は、同じ業種で働く2つ年上の溌溂とした人で、誰に紹介しても、「やさしい、いい人ね」と言われるような男だった。

結婚を考えていると、初めて家族に告げた日、父は少しだけ顔をほころばせ、「豊くんはゴルフやるんだっけな?」と私に訊いた。私が、「やらないと思うよ。彼、サーフィンとかキャンプとかそういうのが好きな人だから」と答えると、父はもっと顔をほころばせ、「そうか、そっちのほうが、子供なんかできたときにはいいんだろうな」と言った。

式場の予約をした。招待状も注文した。彼にもう1人、女がいることに気づいたのはそのころだった。私よりも8つも若い、サーフィンとかキャンプの似合う女の子だった。

――「独立」

■ うりずん|吉田修一・文/佐内正史・写真|光文社|2007 02月|ISBN9784334925307

《キャッチ・コピー》

さあ、始動のとき!走れ。走れ!小説家と写真家がスポーツのある風景をテーマにした初めてのコラボレーション作品集。

memo

若夏(うりずん)の髪の先まで海のたゆたい 岸本マチ子

○うりずん(若夏)……沖縄の方言で4月頃の新緑の季節の意味。 草木がいっせいに芽吹く時に美しい薄緑色をしていることから名付けられた。

 

○若夏とは、旧暦の45月稲穂の出る頃。うりずんは23月麦の穂がでる頃。「うりずん・若夏」などと同義語のように解釈されているが、もともとは前後する二つの季節である。

四角豆……最近、東京のスーパーでも見かけるようになった新顔の野菜。熱帯地方原産で沖縄を中心に栽培されている。沖縄では"ウリズン"と呼ばれている。

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