川田茂雄■ ムチャを言う人――不屈のクレーム対応奮戦記
「ほれ、おかしいやろ! このボタン! なんや、このカメラ!」〔…〕
白尾の言う「ここや、ここ。おかしいやろ」ということは、そこにいる誰もが全く理解できません。指摘されているところがわからないのですから、簡単に直るわけもなく、とにかく修理でお預かりしてよく調べさせて頂くことにしたのですが、〔…〕
「預かってもええけど、写真撮れんから、代わりよこせや!中古はあかんで、中古は。新品や。こっちは新品で撮ってんだから。新品、新品や」
と修理預かりの間、新品のカメラを貸し出せと怒鳴ります。〔…〕
これですっかり白尾の罠にはまってしまったと気づくのに、たいして時間はかかりませんでした。白尾はこの借りたカメラを2時間後に北サービスセンターのカウンターに持ってきて、
「南へ送っといてえ」と言って、ポン!と受付の女性に渡したのです。〔…〕
「借りたカメラを返したのに、おまえのところはなんで借用証を返さへんねん、こら。カメラだけ受け取っといて、あとで俺を陥れる気やろう!」
と怒鳴り出したのです。
2時間前に南サービスセンターでカメラを借りて、借用証はそこに入れたのですから、北サービスセンターに借用証があるわけがないというのは、本人が一番良く知っているはずです。
■ ムチャを言う人――不屈のクレーム対応奮戦記|川田茂雄|中央公論新社|2004年 06月|ISBN:9784120035395
★★★
《キャッチ・コピー》
愉快犯型、神経質型、腹黒犯型、ごね得型……襲いかかるクレームの猛者たちに挑む、お客様相談室カワダ氏の奮闘ぶりやいかに。読んで楽しくためになる、痛快無比なクレーム事件簿。
| 固定リンク
コメント