山本信太郎■ 東京アンダーナイト――“夜の昭和史”ニューラテンクォーター・ストーリー
それから先は勝さんのワンマンショーであった。
「人間空海を描くために、空海がマスターベーションをして、ふすまに白い精液が飛沫となって飛び散るシーンを撮りたい。それが映画表現だ。人間空海を描くにはそれが一番手っ取り早い。映画にはそういう表現が不可欠なのだ」
勝さんは滔々と話し続けた。お坊さんたちは半信半疑の顔をしながらも、すっかり勝さんのペースに巻き込まれているようだった。
ひとしきり話し終えると、また、カチリとスイッチが切り替わった。弘法大師様から変身した遊び人勝新太郎はマネージャーの眞田さんに命じた。
「おい、眞田。今から和尚様たちとみんなで祇園へ行くぞ。すぐ予約しろ! ハイヤーを呼べ! 和尚様、みんなで行きましょう。空海も俺たちも同じ人間だ、何事も遊ばなきゃわからないんだ」
5~6人の高野山大学の幹部の方々を引き連れた勝さんは、その夜、祇園の料亭で豪遊した。〔…〕
それほど空海に入れ込んでいた勝さんだが、どんでん返しが起こった。〔…〕結局、俳優勝新太郎はスクリーンでは空海を演じることはなかった。
■ 東京アンダーナイト――“夜の昭和史”ニューラテンクォーター・ストーリー|山本信太郎|廣済堂出版|2007年 02月|ISBN:9784331512067
★★★
《キャッチ・コピー》
児玉機関、GHQ、豪華ショー、芸能人、ヤクザ…“東洋一”と謳われたナイトクラブで何が起こったか?オーナー自らが衝撃の証言で綴るノンフィクション。
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