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2007.08.18

吉田修一■ 7月24日通り

20070818yoshida8gatu24ka

私はデキャンタに溜まったコーヒーを、並べたカップに注いでいく。一つ一つゆっくりと注いでいると、なぜかしら昨夜ベッドで読んでいたぺリアの詩の一文が浮かんだ。

それは真っ先に読み始めた「ポルトガルの海」の中にあった詩の一文で、その詩がなんという題名で、どういう内容だったかさえも覚えていないのに、その一文だけがはっきりと声になって頭の中でこだまする。

わたしたちはどんなことでも想像できる、

なにも知らないことについては。

コーヒーを注ぐ手を止めて、実際に声に出して言ってみた。すると、不思議なもので、その前後の文章まですらすらと出てくる。

なにか変わったものがあるだろうか。

わたしたちはどんなことでも想像できる、

なにも知らないことについては。

わたしは心身ともに動かない。なにも想像したくない……

奇妙な体験だった。覚えようとしたわけでもない、たった一度、目で追っただけの文章が、まるでこびりつくように私の頑に残っていた。

私はなんとなく恐ろしくなって、慌てて次のカップにコーヒーを注いだ。

■ 724日通り|吉田修一|新潮社|2007 06月|ISBN9784101287539

★★

《キャッチ・コピー》

普通の女には、平凡な未来しかないのかな? でも、一度くらいはドラマみたいな恋をしてみたい-。間違ってもいいから、この恋を選ぶ。そう思ったこと、ありませんか?

memo

同窓会が開かれた居酒屋をドン・ぺドロ4世広場のカフェと呼んだりして、自分の住む街をポルトガル・リスボンに見立てて暮らしているOLが主人公。漫画化、映画化されたようだが、いかにも“アイデア先行”の小説。引用された上述の詩のフレーズだけが気に入った。

*

吉田修一・文/佐内正史・写真■ うりずん

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