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2007.08.14

養老孟司■ 小説を読みながら考えた

20070814yourousyosetuwo

楽をすると、その分、どこかで元を取られる。それを東工大の先生で、ロボット学会の会長だった森政弘氏は「機械を丈夫にすると、人間が壊れる」と表現した。至言ですな。

いまの世の中、どうしたらいいか。そんなこと、単純なことだと私は思う。石油が切れてしまえばいいのである。石油が切れたら、バブルみたいなアホなことは、起こりにくくなる。「人間が壊れる」状況が起こりにくくなるのである。私は石油切れを待って、せっせと車に乗り、飛行機に乗る。石油をどんどん浪費するのである。

それでも石油がなければ大変だとか、心配だとか、まったく思わない。だって私が育った時代には、まさにそんなものはなかったからである。それならそれが暗い時代だったかというなら、ひょっとするといまより明るかったかもしれない。

そもそも石油がなければ人一人の力は相対的に大きくなる。人権だとか、生命尊重だとか、なぜわかりきったことをわざわざいうかといえば、じつはそういうものが欠けてきたからであろう。

どうしてそうなったかというなら、石油の力に比べたら、人間の肉体の力など知れたものに思えるからである。つまり人間の能力が安っぽく見える。それだけのことではないか。

――「相変わらずの老いの繰言」

■ 小説を読みながら考えた|養老孟司|双葉社|2007 04月|ISBN9784575299533

★★★

《キャッチ・コピー》

『ミステリー中毒』に次ぐ第2弾。近年の養老作品は語り下ろしが中心だが、本書は養老氏自身の手によるものでファンには嬉しい一冊。明晰な倫理のメスが、小説を、さらにそれを生んだ社会をスパッと切る。

memo

「小説推理」に連載のミステリ時評だが、ミステリはそっちのけで縦横無尽に書く。

*

養老孟司/内田樹■ 逆立ち日本論

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