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2007.09.30

萩野貞樹■ 旧かなづかひで書く日本語

20070930hagfinokyuukana

明治書院版高校国語教科書に、中島敦『山月記』が出てゐました。まことに文句のない選択です。〔…〕その中にかういふ一節がある。

の中からは、返辞が無かつた。しのび泣きかと思はれるかなが時々れるばかりである。

これが教科書では次のやうになってゐます。

草むらの中からは、しばら返事がなかった。び泣きかと思れるかすかなが時々れるばかりである。

改変部分を太字にしてみました。改変・改竄はこの例では漢字の字種、漢字の字体、仮名遣、小書き、の四項目にわたってゐます。そして原文の四十五字(句読点含む)のうち十二字分が改変されてゐる。改変教科書版の四十九字のうち十六字は原文には存在しないものです。〔…〕

教科書の文字列は、当然『山月記』なんかではない。ただただ醜い模造品であり偽装文にすぎません。

少なくとも場所が教育の場であるならば、これほど露骨な偽造文書を、ホンモノであるかに偽って若者に売りつけ、しかも授業料を徴収したりするのは、非教育であるのみならず、「未成年者ノ知慮浅薄ニ乗ジテ」利益を謀るものであって、まさに刑法二百四十八条(準詐欺罪)にも該当しようかといふ犯罪です。

――第四章 新かなに改変の罪は重い

*

*

■ 旧かなづかひで書く日本語|萩野貞樹|幻冬舎|2007 07月|新書|ISBN9784344980471

★★★

《キャッチ・コピー》

ふだんの手紙や日記を旧かなで書いて、あなたも日本語の美しさを味わってみませんか。言葉が心にしみ入ります。

memo

 ハ行動詞と「ゐる」をおぼえるだけで、旧かなは8割完成だ、と著者は言う。旧かなで俳句をつくるひとには入門書として、おすすめ。ただし上述のような過激な文章に出くわします。

*

山口仲美■日本語の歴史

司馬遼太郎■司馬遼太郎対話選集(2)日本語の本質

丸谷才一■ゴシップ的日本語論

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