大木金太郎/太刀川正樹・訳■ 自伝大木金太郎 伝説のパッチギ王
韓国に残した家族たち、あるいは日本の知り合いに手紙を送ると思っていた彼らは「力道山先生に手紙を送りたい」という言葉に呆れたようすだった。
教導官は「そのために断食したのか!?」と舌打ちをした。〔…〕
私の必死の覚悟が通じたのか、教導官は手紙と便箋、そしてペンを渡してくれた。私は震える気持ちで手紙を書いた。
「力道山先生! 私は先生の弟子になるために青い夢を抱いて韓国から単身で密航した金一(キムイル)という者です。私は先生からプロレスが習いたいです。先生の名前は韓国にいるときから知っていました。
私は幼いとき、まわりからシルムが上手だとほめられました。全羅道のシルム大会に出て、何回も優勝したこともあります。しかし、いま私は密航の罪で逮捕され、このように収容所に閉じこめられたまま一日一日を送っています。私は絶対に力道山先生の弟子になりたいです。どうか私を助けてください」
力道山先生の住所がわからなかったから封筒の表には「東京・力道山先生」とだけ書いた。神がいれば手紙が力道山先生に必ず届くだろうと信じた。
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|大木金太郎/太刀川正樹:訳|講談社|2006年 12月|ISBN:9784062137966
★★★
《キャッチ・コピー》
リングで放ったパッチギ3万発! 力道山時代の生き証人にして、ジャイアント馬場らとともに一世を風靡した伝説のプロレスラーが、密入国、アントニオ猪木との出会い、恩師・力道山との日々、黄金時代を語り尽くす。本書は韓国「日刊スポーツ」紙に、2006年に100回にわたり連載された「金一、私の生きざま、私の挑戦」を翻訳したもの。
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