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2007.09.07

高島俊男■ 座右の名文――ぼくの好きな十人の文章家

20070907taajshimazayuuno

もし、日本の文学者のなかでだれが一番すきか、と問われたら、ウームとしばし考えて「斎藤茂吉」とこたえるでしょうね、多分。

茂吉のなにがすきなのか、といえば、その人物がすきなのである。〔…〕

歌にも文章にもいえることだが、茂吉の書いたものには諧謔感がある。可笑しいところがある。これが茂吉の作品の一番の特色であろう。いうことなすことが滑稽だ。ぼくは以前、斎藤茂吉とはどういう人であったかと問われれば、たったの三言でこたえることができると言ったことがある。

鰻のすきな人であった。

小便の近い人であった。

すぐおこる人であった。〔…〕

茂吉は鰻ずきで、鰻だったら三百六十五日、毎日食ってもあきないというほどだった。戦争中の歌に、

〈これまでに吾に食はれし鰻らは仏となりてかがよふらむか〉

というのがある。これまでに何千匹の鰻を食ったかしれないが、自分の腹のなかで成仏した鰻らは、極楽へ行って、蓮の池でひかりかがやいて泳いでいるであろうか、という歌で、本人はまじめにつくったのだろうが、諧謔感がある。

           ――斎藤茂吉―にじみ出てくる可笑しみ

*

*

■ 座右の名文――ぼくの好きな十人の文章家|高島俊男|文藝春秋|2007 05月|

新書|ISBN9784166605705

★★★

《キャッチ・コピー》

著者がいつもそばに置き、くりかえし読んでいる、新井白石から斎藤茂吉までの十人の作品。本書は、それぞれのどの作品がどう好きか、どうすぐれているかを、その人となりをまじえて解説する。

memo

“しゃべって作った本”であるため、いつもの高島調の文体ではない。とりあげた10人は……。

新井白石/本居宣長/森鴎外/内藤湖南/夏目漱石

/幸田露伴/津田左右吉/柳田國男/寺田寅彦/斎藤茂吉

*

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