小沢昭一■ 小沢昭一座談(1)人類学入門――お遊びと芸と
団 欲求不満におちいったときに書くわけですよ。ガマガエルが自分の油汗を流すように、いろんなへンな写真とか絵を部屋中に散らして置いて、ジーッとそれを見たりしているうちに欲情してくるわけですね。
その欲情を大切にして書くわけです。だからちゃんと筋立ての整った立体的な小説じゃなく、ペンじゃなく気持ちで書くんですよ。
小沢 血の騒ぎで書くわけですね。
団 そういうことです。じゃないと迫力が出ないわけです。
小沢 すると、あなたご自身は完全なSのわけですね。〔…〕
団 まあ、55パーセントのロマンチックなSですな。ブッたり蹴ったり血を見るようなことは好きじゃないんです。心理的な責めが好きなんです。
女を泣かしてみたいとか、羞恥心をくすぐるとか、恥ずかしい顔をさせるとか、そういうことじたいに血が騒ぐんで、苦痛な顔をしてのたうち回るのが好きな人はいませんよ。SM的なセックスを書いているだけで、つまりベッドシーンに縄がからんでいるだけですよ(笑い)。
――「緊縛の苦問は究極のエロスか」団鬼六さん+モデルの橘悦子さん/内外タイムス70・6・17
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■ 小沢昭一座談(1)(1)人類学入門――お遊びと芸と|小沢昭一|晶文社|2007年 06月|ISBN:9784794924810
★★★
《キャッチ・コピー》
海千山千のその道の達人たちと語り合う、遊びと芸のお色気ばなし。40年前に、首都圏の夕刊紙『内外タイムス』で、毎週1回行っていた座談は7年間に及び、実に350回余。そこから厳選した33回。
ストリップ、ソープランド(当時はトルコ!)、妖しい性といった風俗から、今では消えてしまった路上の芸や大衆芸能などが登場。貴重な風俗・庶民史。
《memo》
1970年当時、団鬼六は以下のように紹介されている。
――団鬼六さん(鬼プロダクション)は、S(サド)M(マゾ)小説の作家であり、ピンク映画のプロダクションも経営。それにピンク劇団も持ち、喫茶店の主人でもある多才ぶり。団「私の稼業は? と聞かれたら、エログロ・ナンセンス業といえますな」といいながら、「こんな楽しい世の中はありません」と付け加えた。
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