今野敏■ 果断――隠蔽捜査2
貝沼副署長は、竜崎を見つめた。こちらの気持ちを推し量っているようだ。
「でしたら、一言だけ……」
「何だ?」
「署長は、所轄署が共同体であるという考えに反発を感じておられるようです。しかし、それは紛れもない事実なのです。人は命令だけでは動きません。われわれは日常をともにし、信頼しあう関係でなければなりません」〔…〕
「所轄という組織を信頼してください。現場には便利な言葉があるのです」
「何だ?」
「所要の措置を取れ。これだけで現場の人間は動きます」
「わかった。覚えておこう」
「では、無線とパソコンのオペレーターを手配します」
「頼む」
竜崎は言った。「所要の措置を取ってくれ」
貝沼副署長がかすかにほほえんだ。
*
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■ 果断――隠蔽捜査2|今野敏|新潮社|2007年 04月|ISBN:9784103002529
★★★
《キャッチ・コピー》
あの『隠蔽捜査』が帰ってきた! シリーズ第2弾、満を持しての登場。
警察庁から大森署署長に左遷されたキャリアの竜崎伸也。大森署管内で拳銃を持った強盗犯の立て籠り事件が発生、竜崎は現場で指揮を執る。人質に危機が迫る中、混乱する現場で対立する捜査一課特殊班とSAT。事件は、SATによる犯人射殺で解決したが……。
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