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2007.10.05

福岡伸一■ 生物と無生物のあいだ

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エイブリーは、最後まできわめて憤重な論調の論文を残して、1948年、ロックフェラー医学研究所を定年退職した。

独身を通したエイブリーは、テネシー州ナッシュビルにいた妹のところへ身を寄せ、余生を過ごした。庭の花をいじったり、付近を散策することもあったという。エイブリーは高い空に、あるいは吹き渡る風の中で、彼の手の中で揺れていたDNAの行方に思いを馳せる瞬間があっただろうか。〔…〕

DNAこそが遺伝子の本体であることを明確に示したエイブリーの業績は、生命科学の世紀でもあった20世紀最大の発見であり、分子生物学の幕開きをもたらしたことは疑う余地がない。

DNA構造の解明、そしてDNA暗号の解読などDNA研究の嵐が疾風怒涛のごとくはじまったのは、エイブリーが研究の現場から退場してしばらくたってからのことだった。

あらゆる科学上の報賞が与えられても過分とはいえないこのエポックは、しかしながら、孤高の先駆者の常としてほんの少しだけ早すぎたのである。

――第3章 フォー・レター・ワード

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■ 生物と無生物のあいだ|福岡伸一|講談社|2007 05月|新書|ISBN9784061498914

★★★

《キャッチ・コピー》

「生命とは何か」という生命科学最大の問いに、いま分子生物学はどう答えるのか。歴史の闇に沈んだ天才科学者たちの思考を紹介しながら、現在形の生命観を探る。

ページをめくる手がとまらない極上の科学ミステリー。分子生物学がとどりついた地平を平易に明かし、目に映る景色がガラリと変える!

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