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2007.10.17

本多正一・編集■ 中井英夫――虚実の間に生きた作家

20071017nakainakai

原稿用紙二枚に残されていた中井英夫の遺稿がある。

1992年の夏、乱歩邸を訪れた際思いついた“完璧な密室殺人譚”の冒頭部分であろう。残念ながら出だしのところで中絶している。

――本多正一「中井英夫単行本未収録作品解題」

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「怨」    中井英夫

いま、わたしが、どんな形相でこの手紙を書いているか、写真にしてお眼にかけた方が手取り早いと思われます。わたしの生涯に、これほどの怨みをこめて文字を綴ったことはこれまでになく、これから先も決してないでしょう。

ああしかし「隆車に向う蟷螂の斧」という諺を、あなたは平然として呟き、せせら笑ってわたしの怨みつらみなど気にも留めないに決まっている。よろしい、ではここに女の怨念がいかに凄まじいか、じっくりと教えて差し上げましょう。

これは完全犯罪の手引き書です。しかし残念ながら、これは投函して二十四時間後にはすっかり消えさるよう工夫してあるのです。

従ってころあいを見計らって投函すれば、一読したあと、お手許にはただの白紙が残されるばかりで、わたしを責めることも、罪に問うこともできはしない。そう、もうひとつ、しらじらと残されるのは、あなたの死体だけなのですから。

*

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■ 中井英夫――虚実の間に生きた作家|本多正一・編集|河出書房新社|2007 06月|ISBN9784309740164

★★★

《キャッチ・コピー》

緑川弓雄・碧川潭・塔晶夫・中井英夫……4人の中井英夫による単行本未収録作品。

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