高野秀行■ 怪魚ウモッカ格闘記――インドへの道
私が新しい土地へ行くたびに現地の言葉を習うのは、必要だからというストレートな理由のほかに、それを知らないと不安だというのもある。
地図を持たずに山へ登るような不安である。私にとって、現地語というのは現地の「人間マップ」みたいなものだ。
こんな言い方もできる。新しい土地は一つの家だとする。言葉を知らないと、道ばたから家の外観を眺めているだけだ。これがちょっとで言葉をかじると、家の扉を開き、玄関口に立ったような感じがする。
玄関口では、もちろん家のなかの一部分しか見えないが、屋内の雰囲気がわかる。人が出入りし、その立ち居振る舞いや生活の様子を垣間見ることもできる。そんな気がするのである。
オリヤー語を習っていても、自然とオリッサの文化や生活風景が見えてきた。
何を食べているのか、どんなところに暮らしているのか、昔と今では生活がどのように変わったか。言語が雄弁に語ってくれるのだ。
生活の変わり具合はオリヤー語に数多く混ざっている外来語(多くは英語、ときどきアラビア語)から察することができた。
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■ 怪魚ウモッカ格闘記――インドへの道|高野秀行|集英社|2007年 09月|文庫|ISBN:9784087462159
★★★
《キャッチ・コピー》
探し物中毒の著者は、ある日、インドの謎の怪魚ウモッカの情報を入手、「捕獲すれば世紀の大発見!」と勇み立つ。ルール無し、時間制限無しの戦いが始まった。ついに怪魚探しの秘密兵器を手にインドへ。しかしそこには予想を超えた展開が!奇想爆走ノンフィクション。
《memo》
「西南シルクロードは密林に消える」の続編のような(?)
高野本は「エンタメ・ノンフィクション」というらしい。
そういうジャンルなら、宮嶋茂樹がいたなぁ、しばらく読んでいないが。
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