現代風俗研究会■ 応援・サポート・人助けの風俗
二十世紀後半の日本社会で施行された法令名には、「補助」や「助成」といった言葉が並んでいる。これに比べ、近年では「支援」という言葉が多用される傾向を読み取ることができる。〔…〕
右のリスト〔略〕を眺めると、いまの国家が、支援すべき対象として考えている存在の輪郭が浮かび上がる。残留孤児、被災者、ホームレス、障害者、拉致被害者、高齢者、遅れた国の人びと……。なるほど、他者の助けが必要な存在だ。
また、子育て支援や母親の就業支援など、家族のかたちの変化に対応した施策もうなずける。
だが、そのような制度づくりは、なぜ「支援」という言葉で表現されたのか。「援助」や、「保護」ではなく、また、古くからある「人助け」のような言葉ではないものが選択されたのはなぜだろう。
法律が支援の対象としている人びとに向けられる眼差しの奥にある意識は、どのようなものか。そこには、「本来ならばできてあたりまえのことが、できない人びと」(だから、助けが必要だ)という認識がはたらいている。また、そういう状況にある人びとを、時限的に助けてやろう一定期間に一人前にならないなら、あとのめんどうはみない)というニュアンスが潜んではいないか。
つまり、「支援」という言葉は、やはり近年流行りの「自立」や「自己責任」と連れ立って歩いているのである。
――永井良和「オーバービュー――応援・サポート・人助けの風俗」
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■ 応援・サポート・人助けの風俗|現代風俗研究会|新宿書房|2007年 08月|ISBN:9784880083711
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《キャッチ・コピー》
私があなたにしていることは、あなたのためになっていますか。
あなたが私にしてくれること、それは、私のためですか。
《memo》
本著は現代風俗研究会の年報第29号。
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