大村彦次郎■ 文壇うたかた物語
編集者の適性とは何だろう。一人前の編集者として通用するためには、文学青年的資質もさることながら、それ以上にもっと別な能力が要求されているようだ。
他人よりすぐれた感性と教養がありながら、出世しない編集者もいる。
生涯一編集者などといってみても、その志はよしとして、組織のなかにあっては、あとから来る者の目ざわりになりかねない。
編集技術があるとはいっても、それをのぞいたら、ひとの能力はどこの職場でもおなじようなものである。
まず行動力があって、陽性なのが好まれる。粗笨(そほん)なくらいでも、過剰に反応しないほうがいい。そして物怯じしないのがいい。そうでないと、人間関係を主体とする編集という職業では、神経が疲れ果て、擦りきれてしまう。
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■ 文壇うたかた物語|大村彦次郎|筑摩書房|2007年 10月|文庫|ISBN:9784480423658
★★★
《キャッチ・コピー》
興亡激しい文芸雑誌の世界を舞台に、多くの文士たちが獅子奮迅の活躍をみせた疾風怒涛の一時代。その華々しい小説雑誌の時代を往年の名編集長が自らの編集者体験を通して語った、悲喜こもごもの文壇回想録。
《memo》
1960~70年代……、まだ“文壇”というものがあった。
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