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2007.11.25

中村うさぎ■ さすらいの女王

20071125nakamurasasurai

「自分より大変な人を見ると、自分のクヨクヨが吹っ飛ぶ」という件に関しては、女王様にも微かに身に覚えがある。

5年ほど前のこと、女王様は自宅の玄関でウンコを漏らす、という人生でもっとも落ち込む失態を演じてしまった。〔…〕

後にも先にも、この時ほど、自分を嫌いになった瞬間はない。42歳にもなってウンコ漏らすなんて、生きてる資格がないわ、とまで思い詰め、何もかも嫌になってベッドに潜り込み、どうやって死んでやろうかと鬱々と思い悩んでいた。

と、その時、枕元の電話がけたたましく鳴ったのである。こんな時間に誰だろう、と、受話器を取ると、

「もしもし……」

友人が、地獄の底から響いてくるような陰々滅々たる声で、

「俺、もう死ぬことにしたから。たった今、手首切った。さようなら」

「な、な、なんじゃ、そりゃ――っ!!!!」

女王様、ガバッと起き上がり、タクシーに乗ってそいつの家に駆けつけ、その後は警察やら病院やらの対応に追われて(自殺未遂って、救急車を呼ぶと警察が来るんですね。知らなかったわよ)、自分のウンコ漏らし事件もその後のクヨクヨも、すっかり吹っ飛んだのであった。

――「鬱も吹き飛ぶ話」

*

*

■ さすらいの女王|中村うさぎ|文藝春秋|2005 06月|ISBN9784163671307

★★★

《キャッチ・コピー》

豊胸手術でDカップに変身。

渋谷区

に遷都したり、TV番組のレギュラーが決まったりと「巨乳元年」を謳歌する女王様。そんな中、なんと癌疑惑が勃発して…。「ショッピングの女王」新装開店! 『週刊文春』連載。

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