毎日新聞社社会部■ 縦並び社会――貧富はこうして作られる
―― 格差社会のどこに問題点があると見ていますか。
内橋 私が強調してきたのは、小泉構造改革こそが「新たな構造問題」を生み出しているという現実です。〔…〕
第1に、いくら働いても生活保護世帯の給与水準に達しない所得しか稼げない「働く貧困層」の大量輩出。ちょっとした景気回復などで解決可能な問題ではありません。
第2に急速な「集落の崩壊」。いまおよそ国土の半分が、バスも鉄道もない、生活基盤の破壊された「限界過疎地」となりました。〔…〕
第3に、家計から金融への巨額の「所得移転の構造」。本来、利息として家計が「得べかりし所得」が、壮大な規模で金融機関とその先の企業に収益として移転されました。〔…〕
―― 小泉政権では「官から民へ」という言葉が広く使われました。
内橋 国民はこの言葉に踊らされた。構造改革といえば、官僚絶対優越社会の改革、つまり官僚から市民への「権力再配分」と思い込んだ。実際には「民」は「民」でも国民、市民ではなく、巨大民間資本の「民」のことでした。日本経団連に加盟するような企業に〝ビジネスチャンス〞を移すということだった。
――「競争万能を超えたシステムをいかに構築するか」 内橋克人
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■ 縦並び社会――貧富はこうして作られる|毎日新聞社社会部|毎日新聞社|2006年 09月|ISBN/:9784620317793
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《キャッチ・コピー》
人も会社も横並びが崩れ、「勝ち組」と「負け組」にはっきり分かれていく今、私たちが生きているのは「縦並び社会」ではないか―。取材班は、格差の現場を歩き、読者とともに紙面を作り、日本の目指すべき針路を探った。
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