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2007.11.18

清岡卓行■ 偶然のめぐみ――随想集

20071118kiyookaguuzen

ジュール・ルナール 『博物誌』

ルナールの『博物誌』を私が初めて手にしたのは18歳のときであったが、田園の風景や動植物を描写する簡潔なすはらしさにすっかり魅惑された。岸田国士の名訳のおかげもあったのだろう。

心も体もすがすがしい状態のルナールの目に、さまざまなイメージが新鮮な比喩をともなって飛びこんでくる。「細かい雨が降りだすと、小川はたちまち鳥肌をたでる」し、蝶はまるで「二つ折りの恋文が、花の番地をさがしている」ようである蛇については「ながすぎる」と、この上なく短くて忘れられない批評的なスケッチをする。

私は現在でもこの本をときたま開く。そして、ルナールの人事にきびしく鍛えられたような感性を通じて自然に親しみ、深い安らぎを得る。

この本での彼の観察が日本の俳句にどこかしら通じていることを、河盛好蔵や阿部昭をはじめいろいろな人が指摘している。そのことも魅力の一因となっていよう。

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■ 偶然のめぐみ――随想集|清岡卓行|日本経済新聞出版社|2007 06月|ISBN9784532165970

★★★

《キャッチ・コピー》

大連が、フランス文学が、日本野球連盟が、アカシヤが、巴里が、詩作が、マロニエが…。偶然の輪を作りながら、いま、遠い時刻へと還って往く。詩人が深く慈んだ人生の断片を収めた、清岡卓行3冊目の遺稿集。「私の履歴書」収録。

memo

 本の紹介のすぐれたモデルとして「博物誌」の全文をここに収録。

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