鈴木創士■ 中島らも烈伝
君の死はあまりにも唐突だったが、君らしいといえば君らしい。それに晩年の君の言動からもそれがうかがえたように、君には無意識に死を準備していたような節がある。
君が死ぬ少し前、以前は君が絶対に行くことを拒んだ友人の葬儀に出席したり、昔の悪友を久しぶりに呼び出して、酒を飲んだりしてもいた。〔…〕
でも今度は様子が違った。それに、まるで死後に書かれた回想録のような『異人伝』の出版。
そんなことは全部死んでからの後づけだとさる雑誌の編集長からお叱りを受けたが、僕はそうは思わない。酔っ払って、転げ落ちて死んだとしても、君は途中で無頼派のまま野垂れ死にしたのではない。世間はどうあっても君が中途で挫折したことにしたいらしい。
マスコミ受けをするために人は死ぬわけではない。〔…〕
もちろんだとも、言うまでもない、君の人生は立派に完結した。
すべては…、そう…すべては完結して、消え失せねばならない! 何度でもそう言っておこう。
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■ 中島らも烈伝|鈴木創士|河出書房新社|2005年 01月|ISBN:9784309016887
★★
《キャッチ・コピー》
中島らもの本にS(エス)として登場する古くからの盟友が鎮魂の思いと共に描くらもの肖像。ピュアにして真摯な素顔が甦る。
《memo》
親友への詩的オマージュ? それとも単に自己陶酔?
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