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2007.11.17

岸本佐知子■ 気になる部分

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私がマイナー者としての自覚を持ったのは、小学校四年の時に〝容姿について〞という題で作文を書かされた時だった。

私は思ったままに、「容姿はできるだけいいほうがいい。不細工な人はそれだけで不幸だ。自分ももっと可愛く生まれたかった」と書いた。

作文を返す時、担任の女の先生は「クラスのほとんどの人が同じ意見だったので先生は安心しました」と言って、私の顔をじろりとにらんだ。

なんと、私を除くクラスの全員が〝心がきれいなら容姿の良し悪しなど関係ない″という主旨のことを書いていたのだ。

私は愕然とした。一人だけ踊りの振りを間違えてしまったような恥ずかしさだった。ふだんは他人の容姿をさんざんいじめのネタにしているくせに、平然とそんな建前を書ける級友たちの変わり身の早さが、まぶしかった。

私は漠然と先が思いやられた。こんなことでは立派な大人になれないのではないかと子供心に不安を感じた。そしてその予感は、悲しいことに、おおむねは当たっていたのである。

――「マイナーな人々」

*

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■ 気になる部分|岸本佐知子|白水社|2006 05月|新書|ISBN9784560720875

★★★

《キャッチ・コピー》

眠れぬ夜の「ひとり尻取り」、満員電車のキテレツさん達、屈辱の幼稚園時代―ヘンでせつない日常を強烈なユーモアとはじける言語センスで綴った、名翻訳家による抱腹絶倒のエッセイ集。待望のUブックス化。

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