浅川港■ NYブックピープル物語――ベストセラーたちと私の4000日
面白いのは、ここでも人の交流がきわめて盛んな点である。スカウトだった人が出版社の版権部に移ったり、エージェントをやっていた人がスカウトに転進したり、ご他聞に漏れず実に活発に入れ替わる。
日本的に言えば会社を変わるということだが、どうもそういう感じではない。せいぜい部署を変わるといった感じである。というのも、一度辞めた会社に戻ることもこれまた日常茶飯事なのである。
今のニューヨークでとても面白いのは、少なくとも出版界に限っていえば、業界が一つの会社になっていて、それぞれの出版社は、一部門といった感じでものごとが動いている点である。〔…〕
ほとんどのアメリカ人は、学校を終わって入った会社で一生過ごそうなどとは思わないが、それよりはるかに大きな存在である社会全体に対して忠誠心を持っている。さらに国に対して彼らが持っている帰属意識は日本人とは、比較にもならない。
よく「株式会社ニッポン」などといって、あたかも日本のビジネス界が一枚岩であるかのように喧伝する向きがあったが、ビジネスをするうえで本当に強いのは「コーポレート・アメリカ」ではないのか。
――第4章 アメリカの出版ビジネス
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■ NYブックピープル物語――ベストセラーたちと私の4000日|浅川港|NTT出版|2007年 05月|ISBN:9784757141575
★★★★
《キャッチ・コピー》
グローバルな「本の海」へ飛び込んだ日本人編集者が体験した毎日がエキサイティングでスリリングなアメリカ出版界の日々。
返本の山からベストセラー誕生まで、山あり谷あり、胃が痛くなることも沢山あった海の向こうでの出版物語。
《memo》
ニューヨークで日本人が日本にまったく関係のない英語の本を出版する。現代アメリカ出版事情が手に取るように。
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